18.11.15

トランクケースをあけて



“古く、慣れ親しんだ枕に頭を乗せるまで、旅がどれほど美しいものかを気づくことはできない” -林語堂ー


帰国した日の夜、布団に入り枕に頭をうずめ、この旅のことを考えるとき、たくさんの美しい風景が次から次へと駆け巡ります。旅は記憶の中にあって初めて、その美しい姿を見せてくれるのかもしれません。


スペインという国の、アンダルシアという地方の、マラガとセヴィージャという街の、ほんの一部を、フットボールを通して見てきました。そして、とても印象的だったのは、彼らの笑顔でした。


出会うたび、言葉を交わすたびに、人懐っこい、柔和でチャーミングな笑顔を見せてくれます。ちょうど、陽光をいっぱい浴びて実ったオレンジのように。彼らの心もきっと、豊かなのですね。私たちはしきりにそのことについて話し、それだけで幸せをたくさんもらっている、とこちらまで心が豊かになるようで、感謝するのでした。


彼らにとってフットボールは、ただただそこにあるもののようでした。当たり前のように存在し、それと共に暮らしているようでした。シェルパ族にとっての山のように、バジャウ族にとっての海のように。実体を超えた、一種の精神のように息づいているのでした。


"Some people believe football is a matter of life and death, I am very disappointed with that attitude. I can assure you it is much, much more important than that" -Bill Shanklyー 

この言葉ほど、フットボールを明確に言い表わしている言葉はないでしょう。この言葉の意味をアンダルシアの地で、改めて実感しより深く理解できたた旅でもありました。


ともに巡礼したGKにも感謝の言葉を述べなければなりません。彼にとっても念願の旅だした。日本にいながらフットボールと真剣に向き合い、きちんと考えを持って行動できる彼は信頼するに値する人間です。出会った時から、この旅の最中も、刺激を与えてくれる彼にはありがたい気持ちでいっぱいです。彼の人生にとって転機となるような旅であったならば、行動を共にできた私にとってこの上ない幸せです。


そして、どこまでもパーソナルでどこもかしこもフットボールだらけのこの記事を、最後まで読んでいただいた皆様、本当にありがとうございました。少しの暇つぶしになれれば、ありがたいこのですし、この記事を見て「旅するのもよさそうだな」「フットボールっておもしろそうだな」と思ってくださる方がいたら、これ以上の喜びはありません。


それではこの辺で締めくくり。次の巡礼も、どうぞお楽しみに。



銀杏の色づく頃に、土産の生ハムを食べながら。






17.11.15

5.終わりの地、マドリードへ


なんにでも、始まりがあれば終わりがあります。物語にプロローグとエピローグがあるように、太陽が昇って沈むように、また、人間が生まれて死ぬように。この巡礼にも始まりと終わりがあり、今日がその終わりの日です。


本当に本当に残念で仕方がなかったのは、旅の日程上どうしてもセヴィージャには1日しか滞在できなかったこと。あゝ、もっとこの街のことを知りたかったなあ。ベニート・ビジャマリンにも行きたかったなあ。地のもの旬のものの料理も食べたかったなあ。フラメンコだって見たかったなあ。何よりもっとここの人たちにいろいろなことを聞いてみたかったなあ。


かなり後ろ髪をひかれる思いで(後ろ髪など持ち合わせておりませんが)、鉄道にてマドリードへ向かいます。


ここは気持ちを切り替えて、せっかくマドリードへも行くのですから楽しみましょうよ。ね。


ガイドブックを開き、マドリードのページを眺めます。お、一つ目的を見つけたゾ。


さてマドリードに到着です。帰ってきました、この旅の始まりの地。ホテルは初日と同じところをとっておいたので、迷わず到着。お土産の調達とともにマドリードを散策します。


さすがに、世界にその名を轟かせる街だけあり中心地は観光客でごった返しています。ミッキーっぽいキャラクターとかでぶっちょスパイダーマンとか、趣向を凝らしていない、雑なパフォーマーたちも、そこらかしこで金をせびっています。1セントもあげません。






人ごみをすり抜けながら、向かうは唯一見つけた目的地でございます。狭い路地を入ってくるとそのお店が見えてきました。赤く光るは「CHOCOLATERIA」の文字。店の中ではみな一様にあるものをおいしそうにほおばっていました。それがこちら。




チュロスでございます。このお店の名物はチョコレートチュロス。ホットチョコレートにチュロスをつけていただきます。


甘党の私は「スペインといえばチュロスでしょう。それにマドリードの人気店と来れば行かなきゃね。」というわけで、列に並び注文します。


早速一口食べてみると、うん、想像していたよりおいしい!と言うのも、やっぱり口の中がもたついてしまうくらい甘いのかなあ、と想像していたのです(きっと同じように想像する方も多いはず)。それが、どうしてどうして一本食べ終わってもちっともしつこくありません。チュロス自体には何も味付けされておらず、サラッと揚げられていることと、何よりも、ホットチョコレートの甘さと濃さがよくできているのです。チョコレートの甘さと風味は残しつつ、薄すぎないいいラインをついています。


私のもともとの想像が低かったのか、実物が相当においしいのかは、マドリードに行った際に食べてみてください、としか言えません。「そこをできるだけ伝えるのがこの仕事でしょうよ。」と、はい、おっしゃる通りでございます。失敬。


小腹を満たし、目的地を早くも消化した我々は、とりあえず王宮でも見に行くかと歩き出します。








これ、建物の壁に貼られている、道の名前が書かれたタイルなのですが、とっても素敵ですよね。これの写真を撮るだけの散歩も楽しいかもしれません。






先に見えてきたのは、王宮のお隣にそびえる大聖堂。どこの大聖堂を見ても思うことなのですが、本当によく作ったなあ。






こちらが王宮。バッキンガム宮殿とかヴェルサイユ宮殿と似たような作りに見えます。王様が住むとなると(現在は住んでいないそうです)こういう作りになるものなのでしょうか。


カフェで一服し、暗くなり始めたので夕食をとることに。この旅初めてきちんとしたレストランに入りました。やっぱり写真を撮っておけばよかったなあ。


スーパーで、明日の朝食とお土産を買い込み、売春婦だらけの通りを抜けてメトロの駅を目指します。22:00を過ぎたころの中心地はあんまりいい雰囲気ではありませんでした。


ホテルに到着したのは23:00ごろ。息をつくのも束の間、荷物のパッキングを始めます。生ハムを隠し入れ(国内への持ち込みが禁止されています)、明日着ていく以外の衣類も入れ終わり、ようやっと一息つきます。しばらくこの巡礼を思い返しながら、来る明日の長時間フライトに向けて床に就くのでした。



翌朝は、7:30にホテルを出発し、8:00には空港に到着です。チェックインを済ませ、デューティフリーの店でお土産を買い込み、11:00には出発です。長い長いフライトの始まりです。


行きと同じように、手厳しいモスクワを経由し、度重なる移動により満身創痍ながら、無事成田へと戻ってきたのでした。


疲労感とともに充実感を抱き、「また行く」と心に誓います。


私の記憶に強く焼き付いた今回の巡礼はこうして幕を閉じたのでした。新たなる巡礼の始まりの予感とともに。



16.11.15

4.緑と赤の街


幸か不幸か、人間には「好み」があります。そして「好み」は人それぞれ違います。その違いから、「嫌い」も生まれ、さらにはライヴァリティが生まれます。


例えば、阪神と巨人。日本人には最もわかりやすいライヴァル関係でしょう。特に阪神側が、巨人を強く意識しているように映ります。


ヨーロッパでライヴァリティが最もあらわれる場といえば、もっぱらフットボールのスタジアムです。「ダービー」と呼ばれ、とても特別な試合として認識されています。日本人選手が敵同士で戦い話題になった「ミラノダービー」は、昔から日本でも人気の高いダービーの一つですし、現在、世界中のスポーツの中で最も注目を集める試合は、レアル・マドリードvsバルセロナの通称「クラシコ」です。


本日私たちが向かう、セヴィージャという街も、世界有数のダービーが行われる地であります。文字通り街を二分します。


「レアル・ベティス」と「セヴィージャFC」がまさにそのクラブ。前者のシンボルカラーは「緑」、後者は「赤」です。題名は、つまりこういうことです。


そしてレアル・ベティスのサポーターを「ベティコ(女性はベティカ)」、セヴィージャFCのサポーターを「セヴィジスタ」と呼びます。つまり私はベティコであり、GKはセヴィジスタ、ということです。


今回この街で観戦するのは、ダービーではありませんが、それに匹敵するほどセヴィジスタが敵対心を燃やすクラブ、レアル・マドリードとの試合です。リーガ(スペインリーグの通称)のこの週のメインイベントでもあります。さてさて、どんな試合になるでしょうか。ちなみに私もマドリーが嫌いです。今回はライヴァルのセヴィージャを応援するのではなく(ベティコとして当たり前です)、マドリーを叩き潰しに行きくのです。






前夜の興奮冷めやらぬまま、早朝の列車に乗るためにそそくさとホテルを後にします。マラガから鉄道で2時間30分ほどすればセヴィージャに到着です。駅からタクシーで早速ホテルに向かいます。上の写真はホテルのロビー。私にはちょっとおしゃれすぎます。


受付のいかにもスペイン人らしい髪の毛のカールしたおねえちゃんに大聖堂までの行き方を尋ね、荷物を置いたら出発します。






Tシャツ一枚がちょうどいい気候で、日差しも強く、お酒の好きな人ならビールが欲しくなるのかもしれません。ええ、わたしはアルコールアレルギー(こう言えばなんとなく許されます。本当にダメなのは確かです。)なのでわかりませんが。







この旅の最中ずっとそうだったのですが、とにもかくにも晴天です。南の街というのは、本当に青い空と強い日差しが似合います。







街路樹のオレンジも、目から鼻から元気を与えてくれます。日曜日ということもあり、たくさんの人が訪れていました。


せっかくセヴィージャまで来たのですから、ベニート・ヴィジャマリン(ベティスのホームスタジアム)に行けなくとも、オフィシャルショップくらいは行きたいと、髪の毛カールおねえちゃんにベティスのオフィシャルショップの場所を聞いておきました。彼女いわくこの辺りにあるそうなのですが。


大聖堂から少し歩いてショップを探すと、ありました。





やってない。

せっかく観光客の集まる大聖堂からほど近い好立地なのに、やってない。仕事が休みで週一番のかき入れ時の日曜日なのに、やってない。


そうなのです。日曜日はお店を閉めるものなんです。日本、特に首都圏で育つとそういった感覚が皆無なのですが、割とワールドスタンダードはこちらのほうかもしれません。仕方なく諦めます。「次来た時のお楽しみよ。」と言われたと思って、とぼとぼ一路ホテルへ戻ります。


20:00キックオフの試合に備え、準備を整え、いよいよ決戦の舞台サンチェス・ピスファン(セヴィージャのホームスタジアム)へ向かいます。ホテルから10分ほど歩けばその姿が見えてきます。






スタジアムへ至る道にはすでにセヴィジスタがたむろし、みな一様にビール片手に談笑をしています。ひとまずショップでグッズを買います。もちろんGKだけですよ。




すっかりセヴィジスタらしくなったGKと、ゲームデイの雰囲気をしばし楽しみます。






マドリーの選手たちが乗ったバスが到着すると、老若男女そろいもそろって暴言指笛の嵐。






キックオフが近づくにつれ、たむろしている人の数も増えていきます。








発煙筒も焚かれ、いよいよ気分が高まります。







スタジアムに入ってみると、やっぱりデカい。スタンドの勾配が急で、どこからでもきちんと見られるように作られています。私たちの席も、最上段だったにもかかわらず文句なしの眺めでした。





スペインでは各クラブにクラブの歌(イムーノ)があるのですが、セヴィージャのイムーノがこちらです。ダービーとマドリー戦のみアカペラで歌います。貴重ですよ。





ライヴァルながら、これはなかなかすごいです。スタジアムの一体感に鳥肌が立ちます。


さあ、いよいよキックオフ!






本日も熱いEmery監督。タッチライン沿いでしゃが見ながら戦況を見つめる姿は、リーガではもうおなじみです。

前半22分にコーナーキックから先制されてしまいます。決めたのは、セヴィージャのアカデミーで育ったSergio Ramos。しかしこの場面で負傷し、交代します。もちろんその際は大ブーイング。

この試合1トップを務めたのはImmobile。なかなか活躍できずにいるイタリア人の若武者は、本日も思うようにボールを呼び込めません。個人的に、私がイタリアにいた時に恋をした、ペスカーラの一員だったので、思い入れがあります。

リズムを作れないまま前半残り10分を切ったころ、セヴィージャがコーナーキックを得ます。Konoplyankaの蹴ったボールは、混戦のなかファーに流れます。それを詰めたのは...

Immobile!!!!!

Ciro(彼の名前)よ、よくやったぞ!今までたまっていた鬱憤を晴らすがごとく、Ciro君も喜びを爆発させます。




後半に入ると、試合はセヴィージャペース。チャンスを次々と作り出します。

そして61分、Immobileとのワンツーで抜け出したKonoplyankaが折り返したボールを

Banega!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

さらに74分には、左サイドを崩して中に入れたボールが右サイドまで流れ、それをMarianoが中に入れると、

Llorente!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

なんとなんと3-1ですよ。マドリーの選手は茫然とするばかり。なんと痛快なのでしょう。マドリーの会長Florentino Perezはどんな顔をしてみているんでしょうか。ざまぁ見ろ!

ロスタイムに失点したものの、3-2で見事マドリーを粉砕しました!




帰り道の足の軽いことったらありません。前夜に続き、最高の夜です。マドリーが負ける姿、特に地方の熱狂的なサポーターがついているクラブに負ける姿を見るのは、本当に痛快ですよ。負ける姿を見て喜ぶなんて、私は低俗な人間ですね。いやしかし、マドリーは特別なのですよ。


意気揚々とホテルに戻り、そのテンションのままマイアミ・ドルフィンズ(こちらはNFLです)の試合をパソコンで観戦します。負けてフラストレーションがたまったのは、どうにかこうにかなかったことにして、ベッドにもぐりこむのでした。


明日は旅の最後に少しだけ立ち寄ったマドリードの街です。


それではまた明日、Adios~。
 


15.11.15

3.いざ、ラ・ロサレダヘ


前夜に食べた生ハム(寝る直前なのに10切れも食べちゃった)による胃もたれと、時差ボケによる頭痛により不快な朝を迎えた私は、どうにかこうにかベッドから起き上がり、外出の支度を整えます。


ボーっとする頭をゆすり、今日の日程を確認。そうです。今日は一つ目のメインイベント(“メインイベント”なのに“一つ目”というのはちとおかしいかしらん?)、ベティスvsマラガを観戦しに行くのです。それ以外の用事は特になし。私にとっては人生で初めて我が愛するクラブの試合を生観戦するわけですから、気持ちも入ります。


キックオフは22:00(遅っ)。それまではスーパーで次の日の朝食を調達したり、散歩したり、寝たり。つまり何もせずに過ごします。




お散歩の最中にベティスのバスが!

クゥーっ!

フットボールが好きじゃない人には理解しがたいかもしれませんが、これを見ただけで十分テンションが上がるものなのです。安上がりでいいでしょう?




昨日通りかかり気になっていた市場に、フラっと立ち寄ってみました。






活気に満ち溢れた、その場にいるだけで元気の出ていそうな場内を散策します。
キノコおいしそう。たくさんの種類が並べられていましたから、きっと今が旬なのではないでしょうか。








今日は土曜日、みな今夜の夕食の食材を買いに来ているのでしょうか。お店の人と何か言葉を交えながら、それぞれに欲しいものを買いそろえてゆきます。





マラガにイワシは欠かせません。串焼きにして食べるんだとか。次回来た時には食べるゾ。
生ハムももちろん。この風景はヨーロッパならでは、と言ったところでしょうか。




昼食は近くのカフェでサンドウィッチを。味は、サンドウィッチでした。お腹はかなり膨れましたよ。
コーヒーを愛するGKは、今回の旅でcafe con leche(直訳すると、「コーヒーと牛乳」)がお気に召したそうで、滞在中好んで飲んでいました。写真のコーヒーもまさしくそれです。ちなみに、私はエスプレッソ。選択の余地なしです。


腹ごしらえも済んだところで、いったんホテルに戻り試合に備えて仮眠をとります。


起きたら6:00、出かける支度をすればちょうどいい頃合いです。日中暖かい街も日が沈めば冷え込みます。Ruben Castroのユニフォームはパーカーの中にしっかり着込んで準備万端。アウェイですから、一応ね。マラガのウルトラスなんかに会っちゃって、絡まれたらいやですから。


マラガのホームスタジアム「ラ・ロサレダ」へはホテルから歩いて15分ほど。胸を躍らせながら歩いていると、見えてきました。







キックオフの3時間前ほどに着いたのですが、すでにスタジアムの周りには両チームのサポーターたちでにぎわっています。


この日、心配事が一つありまして(こうしてみると、これまで心配事のなかった日はありませんね)、インターネットでチケットを買った際、間違って子供用のチケットを買ってしまったようなのです。しかしまあ席は確保しているわけだから、差額を払えば入れてくれるだろうと、どうにかなるだろう精神でいたわけです。


早速その旨を伝えると、「オレよくわかんないから、ちょっと聞いてくる」と係りの若いおにいちゃん。そりゃあそうか。そんな奴いないでしょうしね。


帰ってくると、開口一番「ノー。」

ちょっとちょっと。本当に?おにいちゃんいわく「ごめん、不可能みたいよ。」だって。間違ったのは私ですから、悪いのは100%私です。だからこそ粘ります(迷惑ですねー)。

私:「何とかならない?」おにいちゃん:「ごめん、無理みたいなんだよね。あと1時間したらゲートが開くから、ゲートの人に聞いてみて。」

もちろん相手はスペイン語です。どうにかこうにかこんな風なことを言っているな、と聞き取って可能性があることを心の頼りにします。ありがう、親切なおにいちゃん。私が悪いのです。




とりあえずゲートが開くまでスタジアムに併設された、マラガのショップでお買い物。私はベティスを応援する身ですから、もちろん何も買いません。でも、マラガのグッズ、カッコいいなあ...いやいや、買いません。


GKの買い物が終わり、不安だったので、念のためもう一度チケット売り場に行き、今度は違う係りの人(若いおねえちゃんでした)にチケットのことを聞いてみると、後ろから見た感じでは先輩おねえちゃんが寄ってきて、英語で丁寧に説明してくれました。先輩おねえちゃんいわく、「チケットを大人用に交換することはできないから、新たにチケットを購入しなけばいけない。今一番安い席で€55。ごめんなさいね。そうでなければ、そのチケットで入れるかトライしてみて。入れなければまたチケットを買いにくればいいし。」

この人たちは本当に親切だなあ...って、そのアドヴァイスはOKなの?チケット売る側の人が「トライしてみて」って。

まあ先輩おねえちゃんの言うことですから、トライしてみましょうじゃあありませんか。


ゲートがあくまでまだ少し時間があったので、その辺をぶらぶら。せっかくだからベティスサポーターたちと写真を撮ってもらおう。







皆さまアルコールも入り、すでにご機嫌です。「一緒に写真撮ってもらえるかな?」なんて心配はしなくてよさそうです。
さあ、パーカーを脱いでRuben Castroのユニフォームがあらわになります。その瞬間、

「Ohhh!!!」

手招きとともに半ば強引にベティスサポーターの中に引き込まれます。そうかと思ったらなにやら叫び始めます。スペイン語だからわからない。そんなの関係ありません。私も一緒になって訳も分からず飛び跳ねます。







「ああ、俺もベティコの一員になれたんだ。」そんな気がした瞬間でした。しばらくこの人たちからの質問攻めに合い(どこから来たんだ?お前はどうしてベティスを好きになったんだ?この試合のためだけにスペインに来るなんて頭おかしいのか?などなど)写真もひっきりなしに撮られていると、来ました来ました、ベティスのウルトラスです。ウルトラスというのは簡単に言えば、そのチームを中心となって応援しているグループのこと。主にゴール裏にいます。




仲良くなったベティコいわく、「あいつらはちょっと狂ってるからね。スタジアムに着くのがみんなより遅くなるのは、いつもドラッグとかで警察とひと悶着あるからなんだよ。はっはっは。」

そうでしょうね。みんななんだか黒いもんね。どうしてどこもウルトラスは黒いんでしょうか。伝わらないかもしれませんが、やっぱりウルトラスが来ると、ちょっと空気が変わります。警官たちもピリつきますし、マラガサポーターたちは静かです。


無事(かどうかは知りませんが)ウルトラスの入場も終わり、仲良くなったベティコ達ともお別れし、私たちもスタジアムへ向かいます。内心ドキドキしながら。


ゲートは日本の電車の改札のような作りになっていて、バーコードをセンサーに読み込ませて入場します。

「ピッ」

「ピッ」

入れちゃった。セキュリティのおとうさんおかさんも「東洋人なんてめずらしいね」ぐらいな感じで、ニコニコしながら迎え入れてくれます。またもや心配損。でもよかった。(本当は€40以上かかるところを、€15ほどで入っちゃった)


座席からの眺めはこんな感じ。




芝生の状態までわかるくらいピッチとの距離が近く、とても見やすかったです。



こんな感じで写真を撮っていると、写真左上の一角を占めるベティスサポーターが私に気が付き「いいぞー!」てな感じで沸きます。いいですねー、この雰囲気。

しかし東洋人がよほど珍しいのか、はたまたマラガ人、引いてはアンダルシア人が人懐っこいのか、たくさんの人に話しかけられ写真をお願いされました。






みんなアウェイサポーターであり、スペイン語もろくにしゃべれない私に対して、本当に穏やかで優しく接してくれました。マラガの人々全体として言えることですが、とにかく笑顔が印象的です。本当に毎回素敵な笑顔を見せてくれます。きっと個々の人たちは心が豊かなのでしょう。それだけで十分幸せをいただいた気分になります。










選手たちのウォーミングアップも終わり、いよいよキックオフです。



われらが監督 Pepe Melさん。今日もよろしくお願いします。








いい雰囲気ですねー。







当たり前ですが、私の周りはみなマラガサポーター。GKも今夜はマラガを応援します。


前半はマラガが押し気味に試合を進め、ベティスは何度か危ないシーンを作られました。
そしてその時は後半にやってきます。

Ruben!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

やってくれました。やっぱり彼でした。周りが静まり返る中、私は一人で大絶叫。隣の女の子には怒られましたが、もう最高です。着ていったユニフォームの選手が得点したわけですから。持ってるなー。

試合はそのまま1-0で終了。ベティスはアウェイで貴重な勝ち点3をゲットしました。終了間際にマラガサポーターは帰りはじめ、幾分か人のいなくなった周りを見回すと...




きたねぇ。

イタリアもそうでしたが、スタジアムきたねぇ。これを見れば、試合終わって掃除までしていく日本のサポーターが感心される理由がわかります。


私はといえば、スタジアムが汚いなんてことは気になりません。それよりも何よりも、人生初のベティスの試合生観戦で勝利&着ていったユニフォームの選手が得点で、もはや地に足が付きません。感無量。人生は幸せで満ち溢れている。天にも昇るような、最高の心地です。


そのあとのことは正直それほど良く覚えていません。寝たのは確かです。次の日起きましたから。


そんな浮かれ気分で終えた一つ目のメインイベント。次の日に待ち受けるは二つ目のメインイベントです。

それではまた明日、Adios~。