14.3.17

第7回 「聞く」は能動的


小島
よく「本を読むときは批判的に読みなさい」みたいなのがでてくるじゃん、疑ってかかりなさい、みたいな。オレはなんかそれ違うんじゃないかなって思ってて。

――
おー、はい。

小島
まずはその人の言っていることを100%信じて、最後まで読んでみる。読んだ後に自分で考えて、心地よいかとかを思うようにしないと、最初から批判的に読むって、対人関係にしたら失礼だし。

――
そうだよね。読書は作者との対話ともとれるもんね。

小島
そう。それこそエリート的な考え方っぽいよね。エリートだと自分が全部知ってるから「それ違うよ」とか言いたくなるけど、やっぱりそれって腹立つし。一回は受け入れる。受け入れたうえで「ここは違う」って。

――
そうかそうか。そのプロセスは大事かもしれないな。





小島
人と話してるとやっぱりそれってなかなか難しくて。違うって思った瞬間「それ違うよ」って言いたくなっちゃうけど、本だったら違うって思っても、読みすすめようと思えば読みすすめられるし。そこのある種の修行じゃないけど。

――
なるほど。「批判的に読まない」というのは今日のキーポイントかもしれない。
作者がしゃべってるときに「それ違うよっ」とか言うのは(笑)。

小島
すっげぇ腹立つ(笑)。失礼すぎる。





――
今オレが思ったのは、人の話で申し訳ないんだけど、糸井さん矢野顕子さんとの対談のなかで「犬や猫はかわいがらせてくれる」っていうようなことを言ってたんだよね。だから好かれると。本を読むことって、みやぎが「修行」って言ったように、その能力を伸ばすのにはいいのかもしれないね。

小島
はいはい。

――
というのも、みんな「オレの話を聞け」っていう部分があって、本はその「オレの話」だから。

小島
そうね。それはあると思う。

――
だから「いじられ役」はみんなから好かれるのかもね。「いじっていいですよ」っていう。「ぶりっ子」もその部類かもしれない。

小島
たしかにね。この前の会社の副社長かな、としゃべってて、「最近の若い人は」っていうのはオレあんまり好きじゃないけど、最近の若い人は、自分の考えを表現するのは、昔の人に比べて上手になったけど、逆に人の意見を聞くのは、圧倒的に下手になってる、って。
Twitterもそうだけど、SNSって自分の意見を言うのにはいいけど、相手の話を聞くことにはあんまり貢献していないっていうか。そのことは言ってたね。

――
そうかぁ、SNS。





小島
だし、自分の話ばっかりしてるやつってつまんないし(笑)。一緒にいて本当に面白くないし。

――
そうだよね(笑)。それと同時に「うんうん」うなずいているだけも違う。話を聞いた後に「私はこう思います」っていうのを、自分で持てるっていうのも大事だね。

小島
心理学でよく言う「Yes But 法」みたいな。一回は相手のことを受け入れて「だけど」って言うと、相手は受け入れてくれる。相手のことを受け入れずに「違うよ」って言うと受け入れてくれない。

――
そうかそうか。
話を聞く練習。たしかに本は役立つかもしれないね。

小島
と思うよ。オレはね。聞く力は発達すると思う。椅子に座って人の話を延々聞くって、なにか自発的にならないときついし。

――
あぁ、本を読むには能動的にならないとできないのか。

小島
能動的でないと絶対本読みたくならないから。これが本を読む人が少ない原因ではある。

――
なるほどね。なんだか納得しちゃった。「聞く」っていう行為は、実は能動的であるべきなんだ。

小島
学校の授業がつまらないのは受動的だから。

――
そうか。これはいい話かもしれないよ。





小島
ゲームとかネットは受動的でいても楽しめるんだよね。待ってりゃおもしろいものがどんどん来るし。だからネットとかのほうをみんなやっちゃう。

――
受動的な方が楽だもんね。疲れない。

小島
エサをとりに行かなくてもエサがどんどん出てくるんだよ。

――
そうかそうか。でも本当はエサを獲りに行く楽しみがあるんだよね。エサが獲れた時のうれしさ、それを食べるときのおいしさ。

小島
トラだって動物園入れられちゃったら毎日寝てるんだもん。そうなっちゃうのは仕方ないんだよ。エサあるし安全だし。

――
そうだね。そう考えれば確かに読書は狩りだ。本屋っていう狩場があって、幾ばくかの自分の財産を投じて狩るわけだもんね。リスクはある。





小島
そうそう。
ひとつ思い出したんだけど、本を読まない人からすると「そんな本読んですごいな」みたいなのがあるけど、別に自分の中では努力とかそんなこと思ってないし、無理やり読んでるとかもないし。歯磨きをするかのごとく本を読んでる(笑)。

――
「努力」って周りからの見え方みたいなところはあるもんね。

小島
この『努力論』のなかで倖田露伴も言ってるけど、自分で「努力してる」と思ってる時点ではまだ努力じゃない。それをやるのが当たり前になってきてやっと努力してるって言えるから、そこの領域までまずは行け、って。





――
そのとおりだよね。

小島
あともう一個思ったのは、イスラム文化のことを学んで、アラビア半島とかあの辺の土地的なことと対比して日本を考えたときに、やっぱりこれだけ水とか豊かで一年を通して快適に過ごせる国だし、隣の国と国境を接してるわけでもない。一生ここで暮らそうと思えば暮らせる。そういうめちゃくちゃ恵まれた環境に日本人は生まれちゃってるから、そこでなにか変わろうとかする努力って、なかなか生まれづらいのかもしれないと思って。

――
うんうん。





小島
特に今は物質的に恵まれてる時代だし「このままでいいや」と思えば最後まで生きられるから。だけどそのままだと日本はだめになるだろし、そのなかで変えていこうとする人とかが出てこないとよくないから。
だからひょっとしたら、福沢諭吉が『学問のすゝめ』を書いた時代と、今は似てるのかもしれない。

――
あぁ。

小島
あの頃もたぶんみんなが豊かになってきた時代で、武士もいなくなって。だからトランプが大統領に決まった瞬間に、オレは『学問のすゝめ』を読んでてすごい縁を感じた。今までアメリカの言うことを聞いてればとりあえず大丈夫だったけど、今はもうそんなに日本にはお金かけないって言われてるし。アメリカからちょっと距離を置いた時に、日本だけで世界と渡り合っていくためには、やっぱり国民一人ひとりがちゃんと考えて行動しないといけないなっていうのは思った。

――
「国が自立するには...」ってやつだね。

小島
そうそう。だからある意味では今回トランプに決まったことは、日本にとってはチャンスだと思ってる。

――
なるほど。「かっこいい国」への第一歩になるかもしれないね。


――
そろそろ時間だね。あー、おもしろかった。今回もどうもありがとうございました。

小島
はいはい。ありがとうございました。





《おしまい。》
お付き合い、どうもありがとうございました。

13.3.17

第6回 エリートじゃなくてよかった


小島
そうなったときに大事なのは、やっぱり日本語で「こういうこと考えてます」って言えないといけないから、今は英語教育は捨ててる。自分の中では。必要に迫られてもないしね。

――
テクノロジーの進化か。
この先どんな本と出会いたいっていうのはある?

小島
さっき言ったように、ゴールは見えてるからそこに導いてくれる本、人もそうだね。自分を成長させてくれるものかな。

――
難しいのはその時点ではわからないことだもんね。これが導いてくれたとかっていうことは。





小島
そうそう。たぶん自分の中で「こうなりたい」とか「こういうことがしたい」っていうのをちゃんと思っておかないと、そういう人と出会ったときにも気づけないと思うから、常に自分のやりたいことは頭の中に入れておかないとダメなのかなっていうのはある。

――
そうしておかないとそういう出会いはないだろうし、逆に言えばそうしておけばそういう出会いがあるだろうってことだね。

小島
うん。オレひとりで六本木のバーとかに飲みに行くんだけど、「こういうことしたいんですよね」ってそこで仲良くなった人とかに言うと「じゃあこういうやつ紹介してあげるよ」とか「こういうおもしろいことやってるやついるから話してみようか」とか言ってもらえるし、やっぱり思ってること言わないとっていうのはあるかもね。





――
そうやって広がっていくんだね。それと、やっぱりひとりではできないってことだよね。

小島
そう。本当に。自分だけでできるなんてことは思ってないし、自分はエリートじゃないってことはわかってるから、じゃあどうするかってことを考えてるよね。よくある言い方で言うと「人間力」を高めていかないとできないんだろうなって。

――
そうかそうか。

小島
どんだけエリートでもアタマ良くても、「こいつとは一緒に仕事したくねえなぁ」とかさ。逆に「この人のためだったら何でもやってあげたいな」とか。やっぱり差はあるだろうし。そう思ってもらった方が楽だし。そういう意味でも大事だよね。

――
「謙虚さ」もそうだね。知識が増えると謙虚になりやすいかもしれないね。ものごとを断定しにくくなるというか。

小島
そうなんだよね。





――
オレの話になってしまうんだけど、オレは、例えるならば「とんかつはソースじゃないとダメでしょ」っていう人よりも「しょうゆで食べる人もいますよね」「おろしポン酢で食べるのもおいしいですよね」っていう人が好きで。

小島
はいはい。

――
それでいて、さらに「でもわたしはソースで食べるのが一番すきです」っていう人が好きなの。

小島
うんうん。

――
いろんな食べ方を知る、おもしろがれるっていうことだよね。





小島
そうなんだよね。だから、自分と意見が違う人もいるんだっていうことをまず分かったうえで、ほかの人にも伝わるようにするにはやっぱり言葉遣いも必要。「なんでこんなことも分かんないんだよバカ」とか言うと伝わらないし。

――
ブログに書いてたよね。

小島
うん。ネットのせいで自分の伝えたいことが100%伝わらないこともあるし、全部読まずに自分の意見を表明しちゃう人も出てくるし。そこはネットの怖いところだから、そのリスクを少しでも減らすために、言葉遣いはやっぱり一番大事なのかなって思う。

――
これが言葉遣いの話につながってくるのか。

小島
そう、言葉遣い。語彙力もそうか。

――
みやぎが書いた記事で、すごくいいな、と思ったものがあって。この記事に書かれている内容って「とんかつ」の話に通じるところがあると思うんだよね。

小島
あのジェンダーについてのやつか。

――
そう。今世界中で起こってる悲しいことの多くは、本をただせばすべて「不寛容」ってところに行きつくんじゃないかな。





小島
そう。結局そうなんだよね。よく言われてるように、今回トランプが勝ったのも、元々アメリカのエリート層は自分たちの考えは正しいと思ってたけど、自分たちよりも、言い方悪いけどアタマ悪い人たちが、本当はどう思ってるかっていうのをわかってなかった。それで、その思いを代弁してくれたのがトランプだったから勝ったっていう話があるよね。

――
うんうん。

小島
そういうのを読んで、生まれながらのエリートじゃなくてよかったなっていうのはちょっとある。

――
あー、なるほどなるほど。

小島
今の庶民としての感覚を持ちながらじゃないと、日本を変えられないなっていうのがあるし。やっぱり結局99%くらいが庶民だから。

――
明治維新なんかを考えてもそうか。多くの“庶民”たちが活躍したもんね。

小島
うん。自分を含めて庶民からしたら、上から目線で何か言われたところで動かないし。だけど「こうやれば変わりますよ」とか「一緒に頑張りましょう」とか言われたらやってみようかなと思う。これはただ頭いいだけじゃできないし、ただのエリートでもできないと思うから。





《つづく。第7回 「聞く」は能動的》

10.3.17

第5回 「かっこいい国」にしたい


――
今日はこういうふうに話してもらっているけど、話すのと書くのって似てるよね。相手が実際に目の前にいるかいないか、みたいなところがある。

小島
そうだね。

――
本を書いてみたいっていうのもあるの?

小島
あるある。でもやっぱり自分がもっと有名にならないと読んでもらえないし。そういうときのために、今文章を書く練習をしてるっていうのもあるかもしれない。

――
SNSとかに文章を書く以外にも書いたりしてるの?

小島
たまにね。メモに残してる。

――
日記とかは書く?

小島
日記はとくに書かないけど、そのときにふと思ったことは書いたりしてる。ブログとかに載せるようなものではないけど。





――
アイデアみたいなものか。
書いてみたいものっていうのは、例えば小説だったりとかエッセイだったりとか、そういうのはある?

小島
とくにはないかなぁ。小説書けたら面白いだろうけど、別に小説を書きたいとは思わない。それこそ『学問のすゝめ』じゃないけど、そっち方面のものが書ければいいかなって。

――
たしかに、今読んでいる本を聞くとそっちの方向だよね。ブログを読んでもそうだし。

小島
そういう本を書くんだったら、やっぱり結果を残さないといけない。結果残してないのにそれ言ったところで聞いてくれないからね(笑)。





――
そうだよね(笑)。それじゃあ、現状で目指している結果はある?

小島
んー、むずかしいな。でも最終的には日本を「かっこいい国」にしたい。

――
「かっこいい国」。

小島
日本に生まれた人だったら「日本に生まれてよかったな」って思う国だろうし、ほかの国の人からしたら「あの国で働いてみたいな」とか「あの国に住んでみたいな」とか思ってもらえるような国になれば、みんな幸せになるのかな。それが、まあ最終的な目標だけど。





――
あー。それを自分がどういう立場からできればいいなっていうのはあるの?

小島
どうなんだろうね。最終的にそのカタチ、「かっこいい国」になって、なんでこうなったんだろうってみんなが思い返したときに、名前が出てくればいいんじゃないかな。

――
なるほど。例えばわかりやすく「政治家」として、とかじゃなくって、立場はなんでもいいのか。

小島
なんでもいいかな。

――
結果としてそうなったときに、どこかの立場でそれを手伝えていればいい、と。

小島
そうそう。まあでもやっぱりできるだけ中心でね。政治家とかも考えたことあるけど、あんまり楽しくなさそうだし。

――
うん。同感。





小島
さっきも言ったように、自分よりも政治に優秀な人はいっぱいいるから、そしたらそういう人と話して「こういうことやりたいんです」って言って、政治家だったらこの人、科学者だったらこの人、みたいな感じで優秀な人とつながってやった方が早いだろうし。今から自分がめざすよりも。

――
そうかぁ。今話を聞いていて、これは抽象的な目標だと思ってたんだけど、意外と具体的なんだなぁ。頭の中でイメージできてるんだね。

小島
ゴールは見えてるんだけど、そこまでの行きかたがまだ見えてないから、転職していろんなこと知って、っていうのはあるかもな。ゴールはたぶん大体見えてる。

――
今はそのための土台づくりの段階なのかもしれないね。

小島
そうかもね。だから、優秀な人に魅力的だって思ってもらったり、対等に話したりするためには、やっぱり本を読まないといけない。アタマいい人が読んでる本はおさえておかないとダメなのかなっていうのはある。

――
そうか。教養というかね。

小島
そうそう。英語とかも話せた方が楽しいとは思うけど、今英語を学ぶか日本語を学ぶかって考えたときに、英語はたぶん5年か10年くらいで翻訳機が完成して通じるようになるだろうから、そうなったときにどっちが大事かって考えたら...

お店のおねえさん
はい、お待たせしました。キャラメル・バナナのパンケーキです。

小島
あ、はい。(笑)





《つづく。第6回 エリートじゃなくてよかった》

9.3.17

第4回 学問のすゝめ


――
「読書離れ」って果たして本当に問題なんだろうか。

小島
そう思ったけど、本屋とか行ったら結構いっぱい人いるし、よく大学の教授とかも言ってるけど、実は現代人が一番活字を読んでる世代だっていう話もある。

――
あー、そうか。

小島
ネットの記事とかも含めてね。もちろんその内容は問わないけど。だから別にそこまで問題視はしてないけど、でもやっぱり読む文章の質は落ちてるんじゃないかな。





――
質はそうかもしれないね。
みやぎは「日本をよくしたい」っていうのがベースにあって、そのために今取り組んでるのが保育の分野だよね。

小島
はい。

――
一応領域としては教育に入るものでもあると思うんだけど、その教育っていうところで、質の高い日本語を学ぶためには本を読むのがいい、って考えてる部分もあるのかな。

小島
もしかしたらあるのかもな。教育もたしかに興味はあって。自分一人で日本を変えるってなったら難しいけど、ちゃんと小さいころから教育して「日本を変えたい」って人が、百人とかに増えれば可能性は上がるし、千人だったらもっと増える。そういう意味で教育には興味あるかな。できるならやりたい。

――
うんうん。

小島
軽井沢かな?に、日本で初めてインターナショナルスクールをつくった、小林りんさんって人がいて、その人の考え方もちょっと似たような、似たようなって言ったら偉そうだけど、日本を変えるために小さいころから教育をほどこして、世界中から子供を呼んで、多様性とかも学んぶ。それで、世界へ出て行って日本の良さを発信する人をつくる、っていうような。そのためにこの学校をつくったって言ってるから。そういうのもいいなって思う。





――
へぇー。みやぎもそうだけど、かなり大きなビジョンを持っている方なんだね。
その、日本を変えるために、本はどんな役割を果たせそうかな?

小島
個人的にだったら、今の日本を変えるために、例えばじゃあ明治時代の人はどうしてたのか、とかを学ぶための一つの材料だし。昔の人はここでこういう失敗をしたから自分はしないようにしよう、とか。まさに『代表的日本人』にはそういうことが書いてあって。





――
『代表的日本人』。うん。

小島
日本を変えるために奮闘した人たちが、どういうところでつまづいて、なんで成功したか、とかが分かりやすく書いてあるからいいなぁと思う。
でもやっぱり日本全体で考えると、日本人がもっと質の高いものを読まないと、国がダメになっていくと思うし、そのためにも、いい本を一冊でも読んでほしいっていうのはあるね。

――
歴史から学ぶ、となると本はいいねやっぱり。

小島
福沢諭吉『学問のすゝめ』の中で、もちろん勉強する量によって身分の高さが変わるから、勉強するのは大事なんだけれど、なんで勉強するかって言ったら、その先に、日本人一人ひとりが勉強を通して自立していないと、国自身が独立できないってことがある、と。結局国民がバカだったら、政治は良くならない。でも国民がアタマ良ければ、上もちゃんとやろうってなる。だから、日本が列強国に対して存在感を示すためには、まずは国民がしっかりしてなければいけないよ、っていうのを言ってた。





――
あー、なるほど。国民一人ひとりの自立。
本を読むだけではダメで、質の高い本を読んだうえで自分で考えなきゃいけないと。

小島
そうそう。
さっき言ってた「影響を受けた人」もう一人思い出したんだけど、影響を受けたというか受けようと思ってるというか、なのが『項羽と劉邦』劉邦

――
ほー、劉邦ですか。はい。

小島
まだ読み始めたばっかなんだけど、劉邦っていうのは、村の中でも“役立たず”とか“穀つぶし”とか言われてた人物。それに対して項羽は、名門の家の出身で武術とかにも長けてる。単純に見たら、絶対に項羽の方が天下に近いって言われてたけど、結局勝ったのは劉邦なのね。

――
うん。

小島
これが本当かどうかはわからないけれど、司馬遷の書いた『史記』には、歴史的にみても超有能な三人の人物を味方につけることができたから、劉邦は天下統一できたって書かれてるのね。

――
有能な家来かぁ。

小島
それを知って思ったのは、まずオレ自身は凡人だし、自分よりアタマいい人なんて死ぬほどいると思うから、その人たちと同じレベルで争おうとは思ってない。だけど、例えば自分が「こうやりたい」って言って、その人たちを説得して、自分の仲間に入れることはできるんだなって思って。

――
はいはいはい。

小島
自分よりも何倍も優秀な人を仲間に入れれば、自分が実現したいこともできるんだなって。

――
なるほど、はい。

小島
あともう一個劉邦がすごいなって思ったのは、自分でそれをちゃんと言えること。
自分は大したことないけど、その三人がいたおかげで天下統一できたんだよ、っていうのを言えるのは、やっぱり上に立つ人間としてすごいなって思った。

――
あぁ。大事なことだなぁ。





小島
そのへんのことを、これからちゃんと読んで学ぼうとは思ってる。

――
自分を認めるチカラか。

小島
そう。劉邦の才能は、まず、人に気に入られる才能。それと、自分より才能のある人を見つけて仲間に引き込む才能。で、その才能ある人たちがめちゃくちゃ喜ぶくらいにほめたたえる才能。そのへんがあったんだろうなって。

――
こういうのは、“不変の法則”みたいなところがあるかもしれないね。よくよく考えてみれば、今の時代まで語り継がれているんだから、適用できる何かがあるってことだもんね。

小島
まあよく言うのは、歴史は勝った人たちに都合のいいように書かれてるっていうから、これも本当かはわからないけどね。でも学べるところはあると思う。

――
これなんて何千年前とかのレベルの話だもんね(笑)。

小島
そうそう(笑)。でも現代にも適用できる部分があるんだもんね。そういう意味ですごいよね。





《つづく。第5回 「かっこいい国」にしたい》

8.3.17

第3回 マンガのすごさ


――
みやぎは読書を通じて「言葉」自体にも興味を持っているように思うんだけど、「言葉」はやっぱりコミュニケーションツール?

小島
うん。だし、それはもう前提として、英語とかフランス語とか話せるようになったとしても、たぶん考えるときは日本語で考えるはずだから、自分の考えを深めるためには語彙が豊富じゃないと。そういう意味でも日本語は大事にしたいって思う。

――
そういう意味で日本語が大事なのか。オレはてっきり「美しい日本語」って芸術的な領域の話だと思っていたんだけど、そうではないんだね。

小島
それもあるかなー。やっぱり日本語にしかない表現ってあるし。どっちもあるかな。





――
自分が文章を書くときに基準としていることとかはある?

小島
いつも意識してるのは、自分が経営者とかになったときに出しても恥ずかしくない文章。有名じゃないけど、そうなったときに恥ずかしくない文章。

――
難しいかもしれないけど、どういうのが恥ずかしくない文章なんだろう。

小島
言葉遣いかなあ。

――
日本語が正しいかどうか。

小島
うん。そうね。





――
誰に向けて書いているとかはある?

小島
前までは伝わる人にだけ伝わればいいだろうって思ってたんだけど、今はできるだけ多くの人に。やっぱり日本を変えたいっていうのがあるから、それがちゃんと伝わるように。読んで「あ、自分も行動しなきゃな」って思ってくれる人が、一人でも多いといいからね。

――
そうなると自然と言葉遣いも...

小島
あんまり難しい言葉とかはつかわないようにはなってるね。

――
ただ、どうしても専門用語なんかは出てくるよね。そういう時はどうしてる?

小島
たしかに、読みはじめとかだと専門用語も使いたくなる。かっこいいから。でもそれを誰にでも伝わる言葉で伝えられないってことは、それが理解できてないってことだと思う。書いてて反省する部分ではあるよね。だからそこは、理解できるまではあんまり書かないようにはしてる。

――
理解していれば言い換えることは可能。

小島
うん。

――
そのためにも語彙力は必要になってくるわけだ。

小島
そうだね。





――
実際に紹介した本を読んでくれた人っていうのは結構多い?

小島
あんまり多くはないけど、たまにいるとやっぱりうれしいよね。別に押し付けるわけじゃないけど、読んだよって言ってくれると嬉しい。

――
そういう時はその本について話したりするの?

小島
うん。するする。

――
やっぱり読み方が違ったり。

小島
まあね。今思い浮かべてる人には、林真理子さん『野心のすすめ』をおすすめして。女の子なんだけど、女の子が読むと全然違う読み方になると思った。





――
あー、性別で読み方が変わる。なるほど。それはやっぱりおもしろい?

小島
うん、そうね。全然違うし。でも共通してる部分はあるし。

――
あの、みやぎが一回「あなたに合う本見つけます」みたいなことをやってたよね。あれは本を読む人を増やしたいっていうのもあったと思うんだけど、感想を聞きたいっていうのもあったのかな?

小島
そうだね。それを通していろんな話ししたり。映画を観て感想を共有するみたいなことだよね。

――
共有か。本ではたしかに少ないかもしれないね。

小島
それができればおもしろいなと思った。だからマンガはそこがすごいなと思って。本はあんまり読めないけど、マンガだったらめちゃくちゃ読めますっていう日本人結構いると思う。その文化を作ったマンガはすごいなって。たしかにマンガのほうが分かりやすいこともあるしね。

――
そうだね。マンガってすごいね。
共有するって大切なことだもんね。映画は確かにそれができてて、去年の邦画なんかはまさにそれで広まったようなところがある。

小島
そうそう。

――
それを本でもできればいいな、と。

小島
うん、そういうこと。





《つづく。第4回 学問のすゝめ》

7.3.17

第2回 「手段」として


――
今の読書量になったきっかけみたいなものはある?

小島
大学の卒論の時に、参考書籍は多ければ多いほどいいって言われるから、とりあえず図書館にある関連書籍持ってきて読んで、っていうのが始まりかな。それで自分の文章にできたっていうのを、「あ、おもしろいな」って思ったのがあるかな。

――
もともとセットだったんだ。

小島
そうかもしれない。





――
ということは、そのおもしろさっていうのは娯楽としてのおもしろさっていうよりもは、どちらかというと作業のひとつとしておもしろいって感じなのかな?

小島
あー。たしかに、今のとはちょっとずれてるかもしれないけど、読書は「目的」というよりもは「手段」。いい仕事するためにこの本読むとか、何かするために学ぶツールでしかなくて。だからなんか、まあお金と同じようなものかな。

――
「手段」。はい。

小島
前の会社辞めて次の会社入るまでに一週間くらい間空いて、その時仕事も特にないから本を読もうと思ったんだけど、読んでもあんまり感じることがなくて。たぶんそれは目標がないというか、読んだことを実践する場がなかったから、なんかあんまりおもしろくないなって感じたのかな。で、また仕事始めてこういうの読むようになって、共感するところもあるし。

――
「目的」があって、「手段」として読書があると。

小島
でもなんか、「経営者50人が選んだブックリスト」みたいなのもたまに見るけどね。「これ読んでるんだ」とかね。

――
憧れみたいなものもあるのかな?

小島
うん、と思う。だから憧れの人が読んでる本はとりあえず読んでみる。





――
憧れと関連して、今までに影響を受けた作家さんとか作品ってある?

小島
作家はあんまり今思いつかないけど、影響を受けたのはやっぱり経営者というか、ライフネット生命の出口さんもそうだし、あとZOZOTOWNの前澤さんとか。そういう人の考え方がすごい好きで。あとね、もともとNPOのLiving in Peaceっていう団体の代表で、今は自分で会社やってる慎泰俊(しんてじゅん)さんって人なんだけど、その人の考え方もすごい好きで。その人たちが読んでる本は読もうとしてる。

――
その人たちも読書家だったと。尊敬する人たちが読書しているっていうのはモチベーションとして大きいかもしれないね。

小島
そうそう。

――
インタビューするにあたって、みやぎ(彼のニックネーム)のここ三年間くらいのFacebookとかInstagramとかの書籍紹介を見ていたんだけど、わりと最初のころはノンフィクションものが多くて、そこから小説を読む時期に入って、今は専門書というか特定の分野の本が多くなっているような流れだと思ったんだけど、この流れは自分の中で想定していたものだったりするの?





小島
それはでも考えてないかな。

――
自然とこういう流れになった。

小島
もともと小説は好きだけど、小説よりもノンフィクションのほうが好きで。やっぱり現実だし。小説はもちろん素晴らしいけど、結局現実には勝てないよなっていうのが何となくあって。だからノンフィクションのほうが好き。あとはもう仕事を始めて、自分が「こういうことをしたい!」って考えるようになってきて、じゃあそのために今何が必要なんだ、っていうのを考え始めてこういうふうに変わっていったのかもしれない。

――
みやぎの読んでいる本を見ていると、わりと本を通して進む方向が定まっていってるように感じるんだけど。

小島
間違いなくそう。今の仕事を決めたきっかけも、「人」と「本」があって。

――
「人」と「本」。おもしろそう。

小島
まず「人」は、転職を考えているときに、転職というか会社を作りたいって考えていた時に、もうすでに会社をやっている社長の友達から、今までにない形の新しい保育園を作りたいっていう話を聞いたんだよね。確かに面白そうだねって話をして、それなら一緒にNPO作るかってなって。本気でやろうと考えてたんだけど、でもそれやるってなったときに、自分が何できるか考えたら、今は何もないなって。

――
あー、何もなかった。

小島
だからそれなら、まずはその業界に入ってみて、何かできそうなことを考えようって思ったのがひとつ。
あとは、保育の勉強をいろいろし始めたときに、京都大の教授が書いてる『子育て支援が日本を救う』っていう、その本に衝撃を受けて、この分野に絶対に入ろうって思ったのはあったよね。これをこうすれば日本はよくなるんだなっていうのが分かったから、それで決定したんだよね。





――
「人」や「本」との出会いが、新しい世界を開いてくれることはあるよね。
ただ、今はインターネットがあってSNSも普及してる。本を読まなくても、じゃないけれど。そのなかで、情報源として本を大切にする理由、時間を費やす理由は何なんだろう。

小島
一番は、なんだろう、この前本を読んでてふと、思ったんだけど、本を読んでいる時間より、本を閉じて今読んだ本から派生して考えてる時間、自分と向き合ってる時間のほうが大事だなって思った。本を読むことを通して、結局は今自分がどう思っているんだろうとか、こんなこと考えてたんだっていうのが分かる。自分と向き合うために一番有効な手段が本を読むことだからかなって思う。

――
自分の内面をのぞく媒体として優れてるんだ。
例えばそれが映画だった場合とか、ネットの記事だった場合よりもは本のほうがいい?それはもう好みの問題?

小島
そうそう、好みの問題だと思う。映画の人もいると思うし、洋服っていう人もいると思うし。オレはそれが本だったっていうだけでね。





《つづく。第3回 マンガのすごさ》

6.3.17

第1回 本人(ホンビト)の日常






――
あのー、気になっていたことがありまして。本好きの人のバッグの中はどうなっているの?見せてもらってもいいですか?

小島
はい。

――
おぉ、四冊。





小島
志村ふくみさん知ってた?

――
『言葉の贈り物』に出てくるよね?

小島
そうそう。人間国宝。染色家なんだけど、こういう文章もめちゃくちゃ上手くて、日本語がきれいだからオレは好き。

――
いつもバッグはこんな感じなの?

小島
ひとりで外出するときは、財布と携帯と本を持ってるくらい。

――
じゃあ一冊くらい。

小島
ちっちゃいのだったら二冊とか。

――
本を読むときの場所とか、こだわりがあったりする?

小島
一応ね、本読みたいからここ行こう、とかはある。けどどこでも読めるっちゃ読めるかな。そうね。本読むために場所ちょっと探して、みたいなのはあるかもしれないね。

――
普段平日は仕事があるわけだけど、出勤中とかにも読むの?あれ、自転車で出勤してるんだったっけ?

小島
そうそう。今は職場が近いから。それで、会社の下にスタバが入っているから、一時間前くらいに行って読んで、まあちょっと仕事の資料とかも見て出社するっていう感じ。

――
やっぱりカフェなんだ。

小島
そうそう。





――
一日の中で本を読む時間って決めてるの?

小島
特に決めてないけど、なんだろうな、洗濯機まわるの終わるまで待つ、とか、あとは料理が温まるまで待つ、とか。

――
その間で。

小島
読もうと思えば全然。だし、家テレビないから。





――
テレビがない。

小島
そう。それも本を読みたいと思ってわざとテレビ置かなくしたから。映像を観るとしたらiPadとかだけど、そんなに観ないかな。

――
へぇ~。

小島
おかしいよねって言われるけど(笑)。あとはラジオとか流してるけど、そこまでそんな。

――
映像メディアが好きじゃないとかそういうこと?

小島
好きだよ。もともとテレビっ子だし。あると観ちゃうっていうのがやっぱりあるからね。好きだから。でも見終わった後に何が残ってるかっていうと何もないし。それなら本読んでるほうが楽しいかなって思っちゃう。それでどっちが比重高いかって考えて、本にして、じゃあテレビ置かない、って。

――
本を読むための生活環境にしたと。

小島
そうかもね。家とか本当に本棚しかないよ(笑)。

――
それじゃあ家で本を読むほうが多いのかな?休日はどう過ごしてる?

小島
カフェに行く。近くのコメダ珈琲に。

――
コメダ珈琲。

小島
椅子がいい、っていう(笑)。家だといい椅子じゃないから長時間座ってられなくて。

――
それは本を読みに?

小島
そうだね。動画観たりもするよ。休日行くところって言ったらほんと、カフェか代官山の蔦屋書店か、まあ本屋さん。





――
じゃあ、本は基本的に本屋さんで買うの?

小島
うん。だいたい。

――
例えばAmazonとかで買ったりは。

小島
Amazonは本屋で探してなかった時とか、絶版とか。あとは今すぐほしい、って時くらいかな。本屋で読んで一回買うのやめたけど、帰ってきてからすぐほしくなっちゃったりしたら使ったりとか。

――
メインはあくまで本屋なんだ。言ってみればAmazonのほうが便利なわけだよね。でも本屋に行く。

小島
っていうのは、なんだろう、前はあんまり立ち読みしないでネットとかの評判見てAmazonで買ったりしてたけど、だいたいそれって最後まで読まなくて。やっぱり本屋行って10ページくらい立ち読みして、おもしろいなって思ったらだいたい読み終える。
あとは、やっぱり本屋のほうが目的の本じゃなかった本と出会えるっていうのはあるかな。

――
あー、そうかそうか。予期せぬ出会い。

小島
そう。それのほうがおもしろいって思っちゃうから。





――
予期せぬ出会いで買う本もあるということだけど、その前の目的の本を選ぶ基準みたいなものはある?

小島
そんなにこだわってはいないけど、でも根底にあるのは、やっぱり「日本」っていうのと、きれいな日本語だから読むとかっていうのはあるかな。

――
「日本」ね。だいたいの本はここに関連してそうだね。

小島
うん。してると思う。

――
ここまで話を聞いていると相当本を読んでそうだけど、具体的に何冊読むとかそういう目標みたいなものは設定してるの?

小島
前はあったけど、なんかそれを目標にしちゃうと「義務感」というか。Facebookとかで紹介するために読もう、みたいになっちゃうとなんかね、つまんないなって。だから特に今はないかな。

――
そうかそうか。
いま話に出たように、いつもFacebookとかInstagramとかで本の紹介をしてるけど、あれの意図はどんなところにあるの?

小島
多分いくつかあって、まず一つ目は単純に自分がおもしろいと思ってるからそれをいろんな人に知ってほしい。二つ目は本を読まない人が多いから、あれを見てひとりでも「あ、本読んでみよう」って思う人が増えたら、その人とも楽しい話ができるし。あとは、じぶんのことばで残しておけば本の中身が定着する、っていうのもあるらしいから意識的に書いてるのもあるかな。

――
なるほど。やっぱり本を読む人が増えてほしいんだね。

小島
うん。ね。だってこんなにおもしろいものをなんで読まないのって思うし(笑)。





《つづく。第2回「手段」として》