16.11.15

4.緑と赤の街


幸か不幸か、人間には「好み」があります。そして「好み」は人それぞれ違います。その違いから、「嫌い」も生まれ、さらにはライヴァリティが生まれます。


例えば、阪神と巨人。日本人には最もわかりやすいライヴァル関係でしょう。特に阪神側が、巨人を強く意識しているように映ります。


ヨーロッパでライヴァリティが最もあらわれる場といえば、もっぱらフットボールのスタジアムです。「ダービー」と呼ばれ、とても特別な試合として認識されています。日本人選手が敵同士で戦い話題になった「ミラノダービー」は、昔から日本でも人気の高いダービーの一つですし、現在、世界中のスポーツの中で最も注目を集める試合は、レアル・マドリードvsバルセロナの通称「クラシコ」です。


本日私たちが向かう、セヴィージャという街も、世界有数のダービーが行われる地であります。文字通り街を二分します。


「レアル・ベティス」と「セヴィージャFC」がまさにそのクラブ。前者のシンボルカラーは「緑」、後者は「赤」です。題名は、つまりこういうことです。


そしてレアル・ベティスのサポーターを「ベティコ(女性はベティカ)」、セヴィージャFCのサポーターを「セヴィジスタ」と呼びます。つまり私はベティコであり、GKはセヴィジスタ、ということです。


今回この街で観戦するのは、ダービーではありませんが、それに匹敵するほどセヴィジスタが敵対心を燃やすクラブ、レアル・マドリードとの試合です。リーガ(スペインリーグの通称)のこの週のメインイベントでもあります。さてさて、どんな試合になるでしょうか。ちなみに私もマドリーが嫌いです。今回はライヴァルのセヴィージャを応援するのではなく(ベティコとして当たり前です)、マドリーを叩き潰しに行きくのです。






前夜の興奮冷めやらぬまま、早朝の列車に乗るためにそそくさとホテルを後にします。マラガから鉄道で2時間30分ほどすればセヴィージャに到着です。駅からタクシーで早速ホテルに向かいます。上の写真はホテルのロビー。私にはちょっとおしゃれすぎます。


受付のいかにもスペイン人らしい髪の毛のカールしたおねえちゃんに大聖堂までの行き方を尋ね、荷物を置いたら出発します。






Tシャツ一枚がちょうどいい気候で、日差しも強く、お酒の好きな人ならビールが欲しくなるのかもしれません。ええ、わたしはアルコールアレルギー(こう言えばなんとなく許されます。本当にダメなのは確かです。)なのでわかりませんが。







この旅の最中ずっとそうだったのですが、とにもかくにも晴天です。南の街というのは、本当に青い空と強い日差しが似合います。







街路樹のオレンジも、目から鼻から元気を与えてくれます。日曜日ということもあり、たくさんの人が訪れていました。


せっかくセヴィージャまで来たのですから、ベニート・ヴィジャマリン(ベティスのホームスタジアム)に行けなくとも、オフィシャルショップくらいは行きたいと、髪の毛カールおねえちゃんにベティスのオフィシャルショップの場所を聞いておきました。彼女いわくこの辺りにあるそうなのですが。


大聖堂から少し歩いてショップを探すと、ありました。





やってない。

せっかく観光客の集まる大聖堂からほど近い好立地なのに、やってない。仕事が休みで週一番のかき入れ時の日曜日なのに、やってない。


そうなのです。日曜日はお店を閉めるものなんです。日本、特に首都圏で育つとそういった感覚が皆無なのですが、割とワールドスタンダードはこちらのほうかもしれません。仕方なく諦めます。「次来た時のお楽しみよ。」と言われたと思って、とぼとぼ一路ホテルへ戻ります。


20:00キックオフの試合に備え、準備を整え、いよいよ決戦の舞台サンチェス・ピスファン(セヴィージャのホームスタジアム)へ向かいます。ホテルから10分ほど歩けばその姿が見えてきます。






スタジアムへ至る道にはすでにセヴィジスタがたむろし、みな一様にビール片手に談笑をしています。ひとまずショップでグッズを買います。もちろんGKだけですよ。




すっかりセヴィジスタらしくなったGKと、ゲームデイの雰囲気をしばし楽しみます。






マドリーの選手たちが乗ったバスが到着すると、老若男女そろいもそろって暴言指笛の嵐。






キックオフが近づくにつれ、たむろしている人の数も増えていきます。








発煙筒も焚かれ、いよいよ気分が高まります。







スタジアムに入ってみると、やっぱりデカい。スタンドの勾配が急で、どこからでもきちんと見られるように作られています。私たちの席も、最上段だったにもかかわらず文句なしの眺めでした。





スペインでは各クラブにクラブの歌(イムーノ)があるのですが、セヴィージャのイムーノがこちらです。ダービーとマドリー戦のみアカペラで歌います。貴重ですよ。





ライヴァルながら、これはなかなかすごいです。スタジアムの一体感に鳥肌が立ちます。


さあ、いよいよキックオフ!






本日も熱いEmery監督。タッチライン沿いでしゃが見ながら戦況を見つめる姿は、リーガではもうおなじみです。

前半22分にコーナーキックから先制されてしまいます。決めたのは、セヴィージャのアカデミーで育ったSergio Ramos。しかしこの場面で負傷し、交代します。もちろんその際は大ブーイング。

この試合1トップを務めたのはImmobile。なかなか活躍できずにいるイタリア人の若武者は、本日も思うようにボールを呼び込めません。個人的に、私がイタリアにいた時に恋をした、ペスカーラの一員だったので、思い入れがあります。

リズムを作れないまま前半残り10分を切ったころ、セヴィージャがコーナーキックを得ます。Konoplyankaの蹴ったボールは、混戦のなかファーに流れます。それを詰めたのは...

Immobile!!!!!

Ciro(彼の名前)よ、よくやったぞ!今までたまっていた鬱憤を晴らすがごとく、Ciro君も喜びを爆発させます。




後半に入ると、試合はセヴィージャペース。チャンスを次々と作り出します。

そして61分、Immobileとのワンツーで抜け出したKonoplyankaが折り返したボールを

Banega!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

さらに74分には、左サイドを崩して中に入れたボールが右サイドまで流れ、それをMarianoが中に入れると、

Llorente!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

なんとなんと3-1ですよ。マドリーの選手は茫然とするばかり。なんと痛快なのでしょう。マドリーの会長Florentino Perezはどんな顔をしてみているんでしょうか。ざまぁ見ろ!

ロスタイムに失点したものの、3-2で見事マドリーを粉砕しました!




帰り道の足の軽いことったらありません。前夜に続き、最高の夜です。マドリーが負ける姿、特に地方の熱狂的なサポーターがついているクラブに負ける姿を見るのは、本当に痛快ですよ。負ける姿を見て喜ぶなんて、私は低俗な人間ですね。いやしかし、マドリーは特別なのですよ。


意気揚々とホテルに戻り、そのテンションのままマイアミ・ドルフィンズ(こちらはNFLです)の試合をパソコンで観戦します。負けてフラストレーションがたまったのは、どうにかこうにかなかったことにして、ベッドにもぐりこむのでした。


明日は旅の最後に少しだけ立ち寄ったマドリードの街です。


それではまた明日、Adios~。
 


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