16.9.16

~ロスタイム&ポストゲーム~ この時間好きだな、オレ。


英国で生まれたフットボールは世界中に広がり、その地その地で少しずつ変化しながら愛され続けています。

もしかすると、それはコーヒーにも同じことが言えるかもしれません。
東アフリカ原産の豆から生み出された「黒い液体」は、今や世界各地でさまざまに変化しながら楽しまれています。

そしてここにもコーヒー愛好家が。

インタヴューの最後に愛するコーヒーについても聞いてみました。






――家ではどんな楽しみ方をしているのかな?

渡辺:前はコーヒーメーカーを使ってやってたんだけど、今はないから家の裏にあるミニストップで。フットボールを見るときは基本的にコーヒーと合わせます。コーヒーとバウムクーヘンと。試合観る前に買いに行く感じ。「いやー、今日の試合はどうかなー」とか考えながら。

――アイスコーヒーが多い?

渡辺:基本ホット。ホットはこう、「ん~」(香りを楽しむようなジェスチャー)ってとこから始まるから。

――今日もそうだけど、外出先ではどんな楽しみ方をしてる?

渡辺:コーヒーはよく本と合わせて楽しんでる。コーヒー×本はすごく好きな時間。それを目的にカフェに行くことが多いかな。あとはなんか自分で書くときとかは、コーヒー飲みながらのほうが(頭が)整理される。「この時間好きだな、オレ」って思いながら。




――特別な好みはある?

渡辺:ホットのブラックが好きかな。でもエスプレッソとかカプチーノとかもいいなって思う。やっぱりホットかな。ホットするっていうか(笑)。いや、本当に。アイスだとジュース感覚になっちゃう。優雅なじかんにはホットの濃いブラックがいいかな。

――お供はつける?

渡辺:結構甘党でもあるから、ドーナツとかシュガー系のものを合わせると最高だね。だから家だとバウムクーヘン。そこで(コーヒーとバウムクーヘンの)パス交換が始まるわけ。「あー、抜け出したバウムクーヘン」っていう、あれがやっぱり最高だね。とにかく、コーヒーを飲んでいるときは気の休まる瞬間。

――「思い出の一杯」なんてある?




渡辺:味っていうより、どこで飲んだかっていうのがすごい大事かな。海外だとスペインのCafé con leche(ミルク入りコーヒー)。向こうのコーヒーってこういうのなんだ、みたいなのは印象に残ってる。あの「ガッシャーン!」があり(笑)。初めて買ったコーヒーだし初めて飲んだコーヒーだから、鮮明に覚えてます。



○●○●○●○



「オレはこうありたいんだ!」と、自分のことばで丁寧に語ってくれた2時間。

その一つひとつが、押しつけがましくなく、しかししたたかでカラっとした熱さをはらんでいました。

フットボールがなくても人は生きてゆけます。

でも、フットボールがあることで少し豊かに暮らせる人もいます。

これは、そんなひとりの男のことばです。

さてさて、私も試合を観なきゃ。それではこれにて失礼します。



熱いコーヒーとバウムクーヘンを食べながら





最後までお付き合いありがとうございました!

15.9.16

~後半30分~ 君は君でいいんじゃない。


――今はフットボールとどう付き合っているのかな?自身がプレーしたりはしてる?

渡辺:休日にテレビで観るのが基本かな。プレーはしてないなぁ。したいとは思うけどね。でも今後も「恋人」であり続けるだろうね。永遠の「恋人」。

――フットボールを見るには少なくとも90分の時間を割くことになります。もちろんほかにもやることはある。その辺のスケジューリングは苦じゃない?

渡辺:シーズン始まっちゃうとやっぱり(スケジュールが)パンパンにはなるよね。放送カードを確認して、今週は何試合だな、って大雑把にみて何となく計算立てると、今日1試合観ておかないとダメだな、とかって(スケジュールを)組む。もう5、6シーズン観ているから結構慣れてきたね。




――今後フットボールと付き合っていく中でやりたいこととか発展させたいことはある?

渡辺:アウトプットをもうすこししたい。テレビで観て、ちょっと現地(スペイン)で観て、何となくフットボールってこういうものなんだな、向こう(ヨーロッパ)では、日本では、っていうのが少しはわかるようになったから。自分はこう思ってるっていうのを一人でも多くの人が感じ取れるようなものにしていきたいなと思ってて。それがTwitterだったりとかいろいろあるけど。

――スペインで影響を受けたことは普段の生活の部分が大きかったと言っていたよね。アウトプットも、それを見た人の価値観なり生活なり何かがフットボールを通じて少しでも変化すればいいな、という感じなのかな?

渡辺:5年観てきて、なんて言うか、フットボールから人生のすべてを学べると思う。自分を主張する、生きていくうえで。オレはオレなんだ、でいい部分があったりとか。いろんな要素がフットボールにはあるけど、人との付き合い方とかもなんかちょっとヒントになるようなものもあるんだよね。
テレビを通してでも向こう(ヨーロッパ)の文化が少しはわかるから、幅広い視野を持てるというか。日本では常識かもしれないけど、向こうでは違うこととか。些細な部分に違和感を感じられるようになったり。本当にそうなのかな、とか。Jリーグとリーガを比べたときも違うから。そういうところで、後輩とかにも「君は君でいいんじゃない」って。
そういうのも含めてアウトプットしていきたいよね。少しずつ。これが正しいとかじゃなく、こういう人もいるんだっていうのを知ってほしいだけ。

――スペインには行ったわけだけど、ゆくゆくは他の国にも行ってみたいというのはある?




渡辺:もちろん。現地に行くとフットボールだけじゃなくいろんなものを感じられるから。来年は行こうかなって。そのために言葉(他言語)ももっと知りたいって今思い始めてる。

――生活の一つの軸としてフットボールがあるように感じるんだけど、今後それがより大きな軸になったり小さくなったり変化しそうかな?例えば働き方が変わったりだとか。

渡辺:それが今一番考えていることで。フットボールが好きだから仕事にするっていうのも素晴らしいし、しなくても関わり方がある。何かしらのかたちで貢献できたらいいと思うんだけど。

――基本的にフットボールは娯楽?

渡辺:そうだね。そこは原点なんじゃないかな。楽しいもの。楽しくなきゃ。

――そうだよね。それじゃあ、「おまけ」に移ります。




14.9.16

~後半キックオフ~ 人はストーリーが好き。


――話をスペインから日本に移します。リーガとまでは言わないけれど、それでもJリーグのレベルは高いとは言えません。そこで、僕らの代表は今世界のどのくらいの位置にいるんだろう。

渡辺:そんなに高くないなってオレは思う。もちろん選手だけでみたらそれなりのクラブにいるけど、それを代表でのプレーとして考えると、周りが言うほどそんなに高くないなっていうか。でもそこにはまだ伸びしろがあるとも思う。

――純粋な実力でみて世界で上から16番以内に数えられるチームだろうか?

渡辺:ジャイアントキリングが起きて16かな。32か。EUROとか観ちゃうとね。(足元の)技術だけで見たら(日本は)いいと思うんだけど、「フットボール」ってなるとその技術の使い方ももっとうまい使い方を学ばなきゃいけないし。「ボールをつなぐ」とかだったら結構上かもしれないけど、「点を取る」だの「時間をすすめる」だの、いろんなフットボールの要素を考えると、まだまだ。単純すぎちゃう、というか。

――海外のクラブでプレーする選手が増えているけれど、そのほとんどが攻撃的なポジションの選手です。日本の選手育成の仕方にはどう思う。

渡辺:それはでも、メディアの伝え方かな。番組とかでもちゃんと伝える。それが当たり前になれば、日本人は考える能力とかすごいんだし。ただ知らないだけだと思うよ。知れる環境を提供しているのが「スカパー!」とかだけで。
良くも悪くも代表戦はクローズアップされる。その代表戦であの程度の伝え方と取り上げ方してたら、ちょっとそれは難しいよね、っていうか。

――放送のしかたはたしかに日本とヨーロッパではかなりちがうかもしれない。




渡辺:リーガもそうだけど、あの画面だけ見ていたら寝ている試合も結構あると思うんだよね。つまらない試合もある。でも何が楽しいかって、そこに伝える側の思いが入っていたりするんだよね。
小さいころから人は物語を聞いて育つ。人はやっぱりストーリーが好きだし(気持ちが)入り込める。だからフットボールにもストーリーをもたせるっていうのが伝える側の役割だと思う。いいんだよね、間違ってても。自分はこう思うっていうストーリーをつける、それを知るのが面白い。そういう楽しみをいろんなところで日本も作らないと。

――伝える側のレベルアップが必要だ、と。

渡辺:そこはすごく感じるかな。国民気質で、例えばミスした選手をずっと映すとか、そういうのは(日本は)嫌うじゃん。でもそういうところもプロなんだから。バックパスミスりまくってたらキーパーばっかり映したりとか、そしたら、わかんないけどフットボール興味なくて「こいつまたやらかすのかな」みたいなところでも興味がわけば、くだらない試合でも「お、バックパスくるぞ」みたいなので見るようになったりとかさ。つまらない試合だったら、ずっとスマホばっかりいじってるサポーター映して、本当につまらないんだなこの試合、みたいなのね。そういうのも含めてひとつのフットボールっていう。

――つまり、一つのテレビ番組としてフットボール中継をもっと面白くしようよ、っていうことだよね。

渡辺:もっと楽にとらえていいじゃん、フットボールだからずっとフットボールやらなきゃいけないわけじゃないんだよ、って。サポーターがいて選手がいて監督がいて天候があってスタジアムがあって、こんなにいろいろ活かせるツールをどうミックスさせて一つの90分を伝えるか、っていうのが一番の楽しみなのに、一つだけをずっと追ってもね。

――日本人の「試合だ!」っていう性質がそこにも出ているかもしれないね。

渡辺:もともと「娯楽」のひとつなんだから。エンターテインメントとしてフットボールをもっと見せていいんじゃないかな。
例えばハンドがあって、それをずっと映していれば観ているほうでも議論が起こるじゃん。それはさせていいんだよね。でもそれを映すとああだこうだあるからやめましょう、できれいなところばっかり映すと逆によくないと思う。「オレはこう思う」「いや違うだろ」が意外に盛り上がれば、そういう楽しみを覚えてくるヤツとかも、「なになになに」「いやー、こっちじゃね?」とかね。そういう要素もフットボールにはあるし。でもそれだけじゃないっていうのもあれば、より深い理解につながるかもしれない。

――いろんな楽しみ方があっていいわけです。




渡辺:試合だけ楽しむわけじゃないじゃん。美人いるとかで楽しんだりさ。それは自由だから。いろんな楽しさがあるんだよ、フットボールには。でも感動するぜ、みたいなのを伝えてあげれば「ああ、いいかも」って絶対になると思うんだよね。あんなにいいもんないぜ、って。「人生変わりましたから、ぼく」っていう。みんな熱いもの内に秘めてるんだから出しちゃおうよ、っていうのもフットボールなら出せるんだしさ。そういうのをちゃんと伝えてあげれば。



死ぬほど懸けてるからグッとくるんだよね。


――現実問題として、この国はそういう方向にいけるかな?文化としてフットボールが根付くところまでいけるだろうか。

渡辺:海外基準で考えちゃうと、正直...。いろいろあるからね日本は。何でもできちゃう。でも野球ぐらいにはなると思う、ならなきゃいけないと思うかな。

――プロ野球はほとんど毎日試合があっても毎試合3万人くらいの人が観に来ます。でもJリーグは平均すると1万人くらい。

渡辺:本当だよね。でも世界中でプレーされているっていうのは需要があるし、おもしろさはつまっていると思うんだよね。
野球だと、野球を観に行っているっていうよりはビール飲んでちょっとしゃべって「あ、打ったスゲー」ぐらいの感じで行ってる人もすごく多くいると思うんだよね。周りも「野球観に行こう」って、野球が好きっていうよりビアガーデンプラス野球みたいな。なにかそういう楽しみ方っていうのを(フットボールは)どうしていくのかなってところだろうし、あれば需要はあると思う。そういうクラブがあってもいいんじゃない。イベント路線にいくような。そしたらURAWAはURAWAで燃えるしさ。

――スタジアムを娯楽施設化するクラブがあっていい。

渡辺:日本だとちょっと、グワーッと行くのは難しい気がする。良い悪いじゃなく。それでも正しいものを伝えたら「あ、こんなに楽しいんだ」って思う人はもっと多くいると思うんだよね。だってあれだけワールドカップで燃えてるんだからさ。

――個人として何かできることはあるかな。

渡辺:オレは最近会社で「バモス!」を言いまくって、全く知らない社員も「バモスバモス~」とか言うようになってる(笑)。
とにかく、自分の思いはちゃんと発信する。友達にも、スタジアムとかでも。もしかしたら思っている人がいるかもしれない。「でも、周りはこうだし...」っていう人が。「あいつあんなに一人でさけんでたな!」「オレもああしたかったんだよ!」とかって人がもしいれば、「オレも言っていいんだな」ってなってちょっとずつ広がっていくんじゃないかな。

――草の根活動は大切です。

渡辺:でもやっぱり一番大きいのは経歴のある選手たちだから。そういう人たちがまずは先頭に立ってやってくれたらだいぶ変わるよね。

――この人の言うことは参考になる、っていうような“Football Feak”は誰かいる?




渡辺:GiloramoしかりTonyしかりBen Mableyしかり、向こう(ヨーロッパ)の人で日本のことも知っている人のことばって日本人は結構(腑に)おちる。たとえば厚切りジェイソンが本を出して「日本はこうだ」とかっていう方が、日本人が「日本はこうだ」っていうよりも「あ、そういうふうに見られてるのね、へー」ってなるから、そういうのをうまく使ってあげてもいいんじゃないかなって。聞いてても楽しいもんね。

――Twitterとかで、この人は面白いって人はいる?

渡辺:小宮さん(小宮良之)はやっぱり。

――今はテレビや本だけじゃないところに可能性があるよね。Twitterなんかを見るだけでもフットボールの見る目は変わるんじゃない?

渡辺:今は本当にそうだね。

――さて、話を代表にもどします。今後僕らの代表ではどんな試合が観たい?

渡辺:おもしろいおもしろくないってこれは主観なんで、もう、熱いか熱くないかかなってオレは思う。球際とか闘ってほしいし、それに監督も闘ってほしい。スタッフも全員で。前でてってさ。自分も乗れるんだよね。極論本当に闘ってて負けたら、それでオレはスッキリする。日本の試合ってそう思えない試合が多いっていうか。スカしてるじゃないけど。

――EUROのアイスランドやアイルランドがそういう試合を見せていたよね。

渡辺:うん、超良かった。なんか全部をかけて、っていう画面を通しても伝わってくるもが日本はないよね。どのカテゴリーを見ても。死ぬ気になって闘ってほしいんだよね、フットボールは。
オリンピックとかも、死ぬほど懸けてるからグッとくるんだよね。卓球であんなに興奮すると思わなかったもん。水泳とかのあの待ってる時の「来いよ!」っていう。
思ってなくてもあおってほしいしさ。その姿勢だけで最初はいいよ。「オレはそういう選手じゃない」っていうのも分かってるけど、その中でもなにかさ。

13.9.16

~前半15分~ これを見たかったんだよ!


――アンダルシアへ行く以前、スペインにはどんなイメージを持っていた?

渡辺:やっぱり、生活にフットボールが入り込んでいるんだろうなって。漠然としたイメージだとね。それは、(私服として)ユニフォーム着ている人がいたり、その辺のバルのテレビでフットボールが流れてる、ボールを蹴っている人がいる、スポーツ紙の一面が全部フットボール、っていうのが何となくイメージとしてあって、だから(フットボールは)生活の一部なんだろうなって。
それでバルのいたるところで、「昨日のあれはねぇぜ」「いや、でもわたしはあのバックパスありだと思うよ」っていうような話をいろいろしながら「来週ぜったい勝とうぜ」みたいな感じで楽しく生きているのかなって何となくね。

――スタジアムに対するイメージは何かあった?試合の雰囲気も含めて。

渡辺:(サポーター)一人ひとりが結構言いたいこと言ってるんだろうなって。この人は拍手してるけどこっちでは文句言ってたりとか、あっちではハンカチふってたりとかっていう、(自分の気持ちを)発散できる場なんだなって何となくテレビ画面を通して。

――日本との違いみたいなものは感じてた?

渡辺:あるね。応援スタイルが違う。そもそもずっとレッズで、5、6年か。日本は、(野次や称賛のことばを)言うよりも歌を歌う、手拍子をする、みんなで一緒。だからそれを言う機会がなかったり、言っていても聞こえなかったりすることがある。それからリーガを観始めて、あまり応援歌っていうしばりがない。プレーに対してリアクションを起こす。だから“観る”環境にはなってるんだろうなって。
スペインだけじゃなく向こう(ヨーロッパ)のリーグはそういうイメージがある。でもスペイン人のほうがよりいやらしい。判定だの監督だのっていうほうにガーっといく攻撃性は、なんかラテンの国なんだなって。

――そういったイメージを抱いていた中で、現地で試合を観戦しました。まず、ここは日本とそれほど変わらないな、と思った部分はあった?




渡辺:観た席が(ピッチから)近かったから、球のスピードとか見ても意外とやってることの差はそんなに感じなかったんだよね。Dudaのボールとかもよかったけど、「うわ、やっぱヤバいな」っていうのじゃなかったから。そこはちょっとそう感じた。

――テレビで見ると、(Jリーグより)ヨーロッパの主要リーグのほうがボールスピードが速く見えることもあるよね。

渡辺:そう。だから(ボールスピードが)全然違うのかと思ってた。行く前は。

――反対に、ここは(日本と)差があるな、って感じたところは?




渡辺:やっぱり、どこに反応するか。見る側の“目”が全然違うなって思った。ため息しかり、今のはリズムが遅くなったため息だよ、とか。「なんであそこワンタッチではたいてこないんだよ」「なんで持つんだよ」とかっていうのが何となくその「ハァ...」に。
Jリーグはもっと「行けよ!」とか「走れよ」とか。抽象的な感じかも。

――それじゃあ、スタジアムの中だけじゃなく、アンダルシアの旅を通して印象的だったことは何?

渡辺:街の公園(広場)で親子が何気なくボールを蹴っていたのは印象に残ってる。通り過ぎる人たちも別に(文句も)何もないし。むしろボールが転がってきたら「オレもやるか」ぐらいなあの自然な感じはすごくよかった。

――たしかあれは平日の夕方だった。

渡辺:あれは文化なんだなぁって超思ったね。

――マラガは街として決して小さくはない。そういうところで平日の夕方からフットボールをしている子供たちがいる。




渡辺:「危ないからやめなさい」っていう文句も特にないし。ガンガン(ボールが)飛びまくってたけど、別にそれにどうとかはなかった。その時に、日本は今は「公園ではボールはダメです」っていう制限があるのを考えたときに「それじゃあ、そうだよなぁ」っていうか。

――話を聞いていると、地元の人々の生活にどうフットボールが溶け込んでいるのか、っていうところを見たかったのかなって感じるけど、どうかな?

渡辺:それは見たかった。本当に。一応見たかったものは二つあって、ひとつはその、(地元の人々の生活への)フットボールの入り方。もう一つは、向こう(スペイン)の人たちの空気感とか、なんかこう「生きる」っていうことへの考え方とか。フットボールだけじゃなくね。

――実際に現地で体感してみて、生活へのフットボールの溶け込み方は好きだった?

渡辺:最高だった。



「こういうのが人生だな」


――試合の話になるけど、スタジアムの雰囲気とか、観てる人たちの態度っていうのはどうだった?




渡辺:(スペイン人は)酒好きだね(笑)。そこも含めて「フットボール」みたいな。日本のほうが「試合だ!」っていう方が強いかな。観に行ったマドリー戦(セヴィージャvsレアルマドリード)も「マドリーくそだな!たのしみだな、よっしゃ!」っていう。言葉で表すのは難しいんだけど。試合の前、何の会なのかわかんないけどすごいことになってたじゃん。みんなビンに入った酒持って。こういうイベントというか、も含めて楽しんでいるのかなって。

――確かに試合前のスタジアムの周りはすごかった。
よく、日本のスタジアムはすごく安全で、海外のスタジアムは危ないこともある、というようなことも言われるけれど、そういう部分はどうだった?




渡辺:あんなもんじゃないの、フットボールって。って感じだけどな。特に警官隊が出動するようなこともなかったし。むしろ、あれが安全じゃない、っていうようなイメージだったらちょっとキツイんじゃないって思う。

――実際に、事件はありませんでした。

渡辺:「これを見たかったんだよ!」ってオレは思ったね。マラガvsベティスの試合前ベティスのウルトラスが到着した時もすごかったもんね。超良かった。ああいうのを知りたかった。




――試合前、試合、試合後、とスペイン人はわりとサッパリしている印象を受けたんだけど、GKにはどう見えた?

渡辺:多分だれしもが、あのスタジアムで言う言葉が私生活で言う言葉とイコールになっていない感じで、「あの場だからいいんだよ」って。それは選手もサポーターも全員が分かっているから、「好きなこと言えよ。そんなもんだよ」ぐらいのいい意味のわりきり。あれこそが娯楽のひとつなんじゃないの、って思っちゃうよね。

――オレはベティコとして観ていたけど、それに対して何か(ネガティブなことを)言ってくる人もいなかった。

渡辺:むしろ(マラガサポーターに)受け入れられてたもんね。すごかったよね、あの歓迎は。

――試合前はフレンドリーでも、試合中は容赦なく野次をとばす。みんな気持ちの切り替えが上手でした。

渡辺:あれはでも人生にとっていいよ、たぶん。「まぁ、いいっしょ」みたいなふうにすぐ。いつまでも「あん時ああ言われたから」っていうのが無さそうな気がする。さっぱり感あるよね、向こうの人たちって。

――スペインに行って、こうしたいろいろな体験をしたわけだけど、日本に帰ってきてスペインに行く前と変わったことって何かある?

渡辺:普段の生活は結構影響受けたかも。何だろう、あの(スペイン人の)自然な笑顔って。お店に入ったら挨拶があって。知らない人でも「¡Hola!」って。そういうことは大事なんだなって思った。「こういうのが人生だな」じゃないけど。




――やっぱりフットボールの見方が変わったっていうより、普段の生活で受けた印象のほうが強かったのかな?

渡辺:そうだね。そこは本当にわからない部分だったから。フットボールに関しては、オレはサポーターに興味があるから、試合観ている最中、あのプレーでバックスタンドはどういう反応するかなっていうのをより見るようになったかもしれない。

――帰ってきてからスタジアムには行った?

渡辺:行ってない。行きたいなって。