14.9.16

~後半キックオフ~ 人はストーリーが好き。


――話をスペインから日本に移します。リーガとまでは言わないけれど、それでもJリーグのレベルは高いとは言えません。そこで、僕らの代表は今世界のどのくらいの位置にいるんだろう。

渡辺:そんなに高くないなってオレは思う。もちろん選手だけでみたらそれなりのクラブにいるけど、それを代表でのプレーとして考えると、周りが言うほどそんなに高くないなっていうか。でもそこにはまだ伸びしろがあるとも思う。

――純粋な実力でみて世界で上から16番以内に数えられるチームだろうか?

渡辺:ジャイアントキリングが起きて16かな。32か。EUROとか観ちゃうとね。(足元の)技術だけで見たら(日本は)いいと思うんだけど、「フットボール」ってなるとその技術の使い方ももっとうまい使い方を学ばなきゃいけないし。「ボールをつなぐ」とかだったら結構上かもしれないけど、「点を取る」だの「時間をすすめる」だの、いろんなフットボールの要素を考えると、まだまだ。単純すぎちゃう、というか。

――海外のクラブでプレーする選手が増えているけれど、そのほとんどが攻撃的なポジションの選手です。日本の選手育成の仕方にはどう思う。

渡辺:それはでも、メディアの伝え方かな。番組とかでもちゃんと伝える。それが当たり前になれば、日本人は考える能力とかすごいんだし。ただ知らないだけだと思うよ。知れる環境を提供しているのが「スカパー!」とかだけで。
良くも悪くも代表戦はクローズアップされる。その代表戦であの程度の伝え方と取り上げ方してたら、ちょっとそれは難しいよね、っていうか。

――放送のしかたはたしかに日本とヨーロッパではかなりちがうかもしれない。




渡辺:リーガもそうだけど、あの画面だけ見ていたら寝ている試合も結構あると思うんだよね。つまらない試合もある。でも何が楽しいかって、そこに伝える側の思いが入っていたりするんだよね。
小さいころから人は物語を聞いて育つ。人はやっぱりストーリーが好きだし(気持ちが)入り込める。だからフットボールにもストーリーをもたせるっていうのが伝える側の役割だと思う。いいんだよね、間違ってても。自分はこう思うっていうストーリーをつける、それを知るのが面白い。そういう楽しみをいろんなところで日本も作らないと。

――伝える側のレベルアップが必要だ、と。

渡辺:そこはすごく感じるかな。国民気質で、例えばミスした選手をずっと映すとか、そういうのは(日本は)嫌うじゃん。でもそういうところもプロなんだから。バックパスミスりまくってたらキーパーばっかり映したりとか、そしたら、わかんないけどフットボール興味なくて「こいつまたやらかすのかな」みたいなところでも興味がわけば、くだらない試合でも「お、バックパスくるぞ」みたいなので見るようになったりとかさ。つまらない試合だったら、ずっとスマホばっかりいじってるサポーター映して、本当につまらないんだなこの試合、みたいなのね。そういうのも含めてひとつのフットボールっていう。

――つまり、一つのテレビ番組としてフットボール中継をもっと面白くしようよ、っていうことだよね。

渡辺:もっと楽にとらえていいじゃん、フットボールだからずっとフットボールやらなきゃいけないわけじゃないんだよ、って。サポーターがいて選手がいて監督がいて天候があってスタジアムがあって、こんなにいろいろ活かせるツールをどうミックスさせて一つの90分を伝えるか、っていうのが一番の楽しみなのに、一つだけをずっと追ってもね。

――日本人の「試合だ!」っていう性質がそこにも出ているかもしれないね。

渡辺:もともと「娯楽」のひとつなんだから。エンターテインメントとしてフットボールをもっと見せていいんじゃないかな。
例えばハンドがあって、それをずっと映していれば観ているほうでも議論が起こるじゃん。それはさせていいんだよね。でもそれを映すとああだこうだあるからやめましょう、できれいなところばっかり映すと逆によくないと思う。「オレはこう思う」「いや違うだろ」が意外に盛り上がれば、そういう楽しみを覚えてくるヤツとかも、「なになになに」「いやー、こっちじゃね?」とかね。そういう要素もフットボールにはあるし。でもそれだけじゃないっていうのもあれば、より深い理解につながるかもしれない。

――いろんな楽しみ方があっていいわけです。




渡辺:試合だけ楽しむわけじゃないじゃん。美人いるとかで楽しんだりさ。それは自由だから。いろんな楽しさがあるんだよ、フットボールには。でも感動するぜ、みたいなのを伝えてあげれば「ああ、いいかも」って絶対になると思うんだよね。あんなにいいもんないぜ、って。「人生変わりましたから、ぼく」っていう。みんな熱いもの内に秘めてるんだから出しちゃおうよ、っていうのもフットボールなら出せるんだしさ。そういうのをちゃんと伝えてあげれば。



死ぬほど懸けてるからグッとくるんだよね。


――現実問題として、この国はそういう方向にいけるかな?文化としてフットボールが根付くところまでいけるだろうか。

渡辺:海外基準で考えちゃうと、正直...。いろいろあるからね日本は。何でもできちゃう。でも野球ぐらいにはなると思う、ならなきゃいけないと思うかな。

――プロ野球はほとんど毎日試合があっても毎試合3万人くらいの人が観に来ます。でもJリーグは平均すると1万人くらい。

渡辺:本当だよね。でも世界中でプレーされているっていうのは需要があるし、おもしろさはつまっていると思うんだよね。
野球だと、野球を観に行っているっていうよりはビール飲んでちょっとしゃべって「あ、打ったスゲー」ぐらいの感じで行ってる人もすごく多くいると思うんだよね。周りも「野球観に行こう」って、野球が好きっていうよりビアガーデンプラス野球みたいな。なにかそういう楽しみ方っていうのを(フットボールは)どうしていくのかなってところだろうし、あれば需要はあると思う。そういうクラブがあってもいいんじゃない。イベント路線にいくような。そしたらURAWAはURAWAで燃えるしさ。

――スタジアムを娯楽施設化するクラブがあっていい。

渡辺:日本だとちょっと、グワーッと行くのは難しい気がする。良い悪いじゃなく。それでも正しいものを伝えたら「あ、こんなに楽しいんだ」って思う人はもっと多くいると思うんだよね。だってあれだけワールドカップで燃えてるんだからさ。

――個人として何かできることはあるかな。

渡辺:オレは最近会社で「バモス!」を言いまくって、全く知らない社員も「バモスバモス~」とか言うようになってる(笑)。
とにかく、自分の思いはちゃんと発信する。友達にも、スタジアムとかでも。もしかしたら思っている人がいるかもしれない。「でも、周りはこうだし...」っていう人が。「あいつあんなに一人でさけんでたな!」「オレもああしたかったんだよ!」とかって人がもしいれば、「オレも言っていいんだな」ってなってちょっとずつ広がっていくんじゃないかな。

――草の根活動は大切です。

渡辺:でもやっぱり一番大きいのは経歴のある選手たちだから。そういう人たちがまずは先頭に立ってやってくれたらだいぶ変わるよね。

――この人の言うことは参考になる、っていうような“Football Feak”は誰かいる?




渡辺:GiloramoしかりTonyしかりBen Mableyしかり、向こう(ヨーロッパ)の人で日本のことも知っている人のことばって日本人は結構(腑に)おちる。たとえば厚切りジェイソンが本を出して「日本はこうだ」とかっていう方が、日本人が「日本はこうだ」っていうよりも「あ、そういうふうに見られてるのね、へー」ってなるから、そういうのをうまく使ってあげてもいいんじゃないかなって。聞いてても楽しいもんね。

――Twitterとかで、この人は面白いって人はいる?

渡辺:小宮さん(小宮良之)はやっぱり。

――今はテレビや本だけじゃないところに可能性があるよね。Twitterなんかを見るだけでもフットボールの見る目は変わるんじゃない?

渡辺:今は本当にそうだね。

――さて、話を代表にもどします。今後僕らの代表ではどんな試合が観たい?

渡辺:おもしろいおもしろくないってこれは主観なんで、もう、熱いか熱くないかかなってオレは思う。球際とか闘ってほしいし、それに監督も闘ってほしい。スタッフも全員で。前でてってさ。自分も乗れるんだよね。極論本当に闘ってて負けたら、それでオレはスッキリする。日本の試合ってそう思えない試合が多いっていうか。スカしてるじゃないけど。

――EUROのアイスランドやアイルランドがそういう試合を見せていたよね。

渡辺:うん、超良かった。なんか全部をかけて、っていう画面を通しても伝わってくるもが日本はないよね。どのカテゴリーを見ても。死ぬ気になって闘ってほしいんだよね、フットボールは。
オリンピックとかも、死ぬほど懸けてるからグッとくるんだよね。卓球であんなに興奮すると思わなかったもん。水泳とかのあの待ってる時の「来いよ!」っていう。
思ってなくてもあおってほしいしさ。その姿勢だけで最初はいいよ。「オレはそういう選手じゃない」っていうのも分かってるけど、その中でもなにかさ。

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