13.9.16

~前半15分~ これを見たかったんだよ!


――アンダルシアへ行く以前、スペインにはどんなイメージを持っていた?

渡辺:やっぱり、生活にフットボールが入り込んでいるんだろうなって。漠然としたイメージだとね。それは、(私服として)ユニフォーム着ている人がいたり、その辺のバルのテレビでフットボールが流れてる、ボールを蹴っている人がいる、スポーツ紙の一面が全部フットボール、っていうのが何となくイメージとしてあって、だから(フットボールは)生活の一部なんだろうなって。
それでバルのいたるところで、「昨日のあれはねぇぜ」「いや、でもわたしはあのバックパスありだと思うよ」っていうような話をいろいろしながら「来週ぜったい勝とうぜ」みたいな感じで楽しく生きているのかなって何となくね。

――スタジアムに対するイメージは何かあった?試合の雰囲気も含めて。

渡辺:(サポーター)一人ひとりが結構言いたいこと言ってるんだろうなって。この人は拍手してるけどこっちでは文句言ってたりとか、あっちではハンカチふってたりとかっていう、(自分の気持ちを)発散できる場なんだなって何となくテレビ画面を通して。

――日本との違いみたいなものは感じてた?

渡辺:あるね。応援スタイルが違う。そもそもずっとレッズで、5、6年か。日本は、(野次や称賛のことばを)言うよりも歌を歌う、手拍子をする、みんなで一緒。だからそれを言う機会がなかったり、言っていても聞こえなかったりすることがある。それからリーガを観始めて、あまり応援歌っていうしばりがない。プレーに対してリアクションを起こす。だから“観る”環境にはなってるんだろうなって。
スペインだけじゃなく向こう(ヨーロッパ)のリーグはそういうイメージがある。でもスペイン人のほうがよりいやらしい。判定だの監督だのっていうほうにガーっといく攻撃性は、なんかラテンの国なんだなって。

――そういったイメージを抱いていた中で、現地で試合を観戦しました。まず、ここは日本とそれほど変わらないな、と思った部分はあった?




渡辺:観た席が(ピッチから)近かったから、球のスピードとか見ても意外とやってることの差はそんなに感じなかったんだよね。Dudaのボールとかもよかったけど、「うわ、やっぱヤバいな」っていうのじゃなかったから。そこはちょっとそう感じた。

――テレビで見ると、(Jリーグより)ヨーロッパの主要リーグのほうがボールスピードが速く見えることもあるよね。

渡辺:そう。だから(ボールスピードが)全然違うのかと思ってた。行く前は。

――反対に、ここは(日本と)差があるな、って感じたところは?




渡辺:やっぱり、どこに反応するか。見る側の“目”が全然違うなって思った。ため息しかり、今のはリズムが遅くなったため息だよ、とか。「なんであそこワンタッチではたいてこないんだよ」「なんで持つんだよ」とかっていうのが何となくその「ハァ...」に。
Jリーグはもっと「行けよ!」とか「走れよ」とか。抽象的な感じかも。

――それじゃあ、スタジアムの中だけじゃなく、アンダルシアの旅を通して印象的だったことは何?

渡辺:街の公園(広場)で親子が何気なくボールを蹴っていたのは印象に残ってる。通り過ぎる人たちも別に(文句も)何もないし。むしろボールが転がってきたら「オレもやるか」ぐらいなあの自然な感じはすごくよかった。

――たしかあれは平日の夕方だった。

渡辺:あれは文化なんだなぁって超思ったね。

――マラガは街として決して小さくはない。そういうところで平日の夕方からフットボールをしている子供たちがいる。




渡辺:「危ないからやめなさい」っていう文句も特にないし。ガンガン(ボールが)飛びまくってたけど、別にそれにどうとかはなかった。その時に、日本は今は「公園ではボールはダメです」っていう制限があるのを考えたときに「それじゃあ、そうだよなぁ」っていうか。

――話を聞いていると、地元の人々の生活にどうフットボールが溶け込んでいるのか、っていうところを見たかったのかなって感じるけど、どうかな?

渡辺:それは見たかった。本当に。一応見たかったものは二つあって、ひとつはその、(地元の人々の生活への)フットボールの入り方。もう一つは、向こう(スペイン)の人たちの空気感とか、なんかこう「生きる」っていうことへの考え方とか。フットボールだけじゃなくね。

――実際に現地で体感してみて、生活へのフットボールの溶け込み方は好きだった?

渡辺:最高だった。



「こういうのが人生だな」


――試合の話になるけど、スタジアムの雰囲気とか、観てる人たちの態度っていうのはどうだった?




渡辺:(スペイン人は)酒好きだね(笑)。そこも含めて「フットボール」みたいな。日本のほうが「試合だ!」っていう方が強いかな。観に行ったマドリー戦(セヴィージャvsレアルマドリード)も「マドリーくそだな!たのしみだな、よっしゃ!」っていう。言葉で表すのは難しいんだけど。試合の前、何の会なのかわかんないけどすごいことになってたじゃん。みんなビンに入った酒持って。こういうイベントというか、も含めて楽しんでいるのかなって。

――確かに試合前のスタジアムの周りはすごかった。
よく、日本のスタジアムはすごく安全で、海外のスタジアムは危ないこともある、というようなことも言われるけれど、そういう部分はどうだった?




渡辺:あんなもんじゃないの、フットボールって。って感じだけどな。特に警官隊が出動するようなこともなかったし。むしろ、あれが安全じゃない、っていうようなイメージだったらちょっとキツイんじゃないって思う。

――実際に、事件はありませんでした。

渡辺:「これを見たかったんだよ!」ってオレは思ったね。マラガvsベティスの試合前ベティスのウルトラスが到着した時もすごかったもんね。超良かった。ああいうのを知りたかった。




――試合前、試合、試合後、とスペイン人はわりとサッパリしている印象を受けたんだけど、GKにはどう見えた?

渡辺:多分だれしもが、あのスタジアムで言う言葉が私生活で言う言葉とイコールになっていない感じで、「あの場だからいいんだよ」って。それは選手もサポーターも全員が分かっているから、「好きなこと言えよ。そんなもんだよ」ぐらいのいい意味のわりきり。あれこそが娯楽のひとつなんじゃないの、って思っちゃうよね。

――オレはベティコとして観ていたけど、それに対して何か(ネガティブなことを)言ってくる人もいなかった。

渡辺:むしろ(マラガサポーターに)受け入れられてたもんね。すごかったよね、あの歓迎は。

――試合前はフレンドリーでも、試合中は容赦なく野次をとばす。みんな気持ちの切り替えが上手でした。

渡辺:あれはでも人生にとっていいよ、たぶん。「まぁ、いいっしょ」みたいなふうにすぐ。いつまでも「あん時ああ言われたから」っていうのが無さそうな気がする。さっぱり感あるよね、向こうの人たちって。

――スペインに行って、こうしたいろいろな体験をしたわけだけど、日本に帰ってきてスペインに行く前と変わったことって何かある?

渡辺:普段の生活は結構影響受けたかも。何だろう、あの(スペイン人の)自然な笑顔って。お店に入ったら挨拶があって。知らない人でも「¡Hola!」って。そういうことは大事なんだなって思った。「こういうのが人生だな」じゃないけど。




――やっぱりフットボールの見方が変わったっていうより、普段の生活で受けた印象のほうが強かったのかな?

渡辺:そうだね。そこは本当にわからない部分だったから。フットボールに関しては、オレはサポーターに興味があるから、試合観ている最中、あのプレーでバックスタンドはどういう反応するかなっていうのをより見るようになったかもしれない。

――帰ってきてからスタジアムには行った?

渡辺:行ってない。行きたいなって。

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