大いに体力気力回復しのんびりと藤枝宿を出発。松並木を歩く。
廿三番目の島田宿を過ぎれば
箱根八里は馬でも越すが越すに越されぬ大井川
と歌われた東海道第一の大河大井川へとたどり着く。
度々氾濫を起こした暴れ川にも、今は立派な鉄橋がかかり車も人も難なく往来する。
橋を渡り向こう岸までやってくればもうそこは廿四番目の金谷宿。
この金谷宿から金谷坂を登る。途中受験生がそのご利益を授かろうと訪れる滑らず地蔵なるお地蔵さまがいる。この地蔵尊置かれたのは最近で、なんでも石畳は滑らないからと名付けられたんだとか。雨が降る日は参拝を避けたい。
菊川坂を下り間の宿菊川へ至る。
その由来菊花紋の石が多く出てきたからだそうな。うそくせえがこういう言い伝えをみるもまた旅の楽しみ。
再び現れた上り坂は箱根峠、鈴鹿峠と並ぶ難所小夜の山中である。斜面には茶畑。道は舗装され何不自由ないがなにぶん急登骨が折れる。
登り終えたところには久延寺。ここには遠州七不思議のひとつ、赤子の鳴き声を発したという夜泣き石がある。ほかに人もおらずそよ風の吹く音しかしない中、うそくさい説明書きを読んでいると
にゃ~
三平:...鳴いた...
にゃ~
三平:おいおい夜でもねえのにほんとうに鳴きやがったぞこの石。気味がわりいねえまったく。
にゃ~
三平:まだ鳴いてるよ。弱ったなあこりゃ。
少し考えてみるってえと赤ん坊にしては鳴き声がどうも変だ。おっかなびっくりしていると石の後ろに白猫が一匹。すました顔して
にゃ~
三平:だましやがったなネコ公。こんちくしょうめ。にゃ~なんて鳴く石があるもんか。そうやっておどろかしておめえ金稼えでんだな。うまくやりやがんねえまったく。
これがうそくせえようで事実だからたまらなかった。そん時の三平の焦り様ったら人様に見せられたもんじゃない。
ネコに一杯食わされ恥ずかしいやら情けないやらとぼとぼ歩けば左手に立派な歌碑。
年たけてまた越ゆべしと思ひきや命なりけり小夜の中山
『新古今和歌集』に載りたるこの歌は漂泊の僧西行法師のもの。歌碑の根元には西行法師の像もさりげなく鎮座する。
ここ小夜の中山は西行以外にもおおくの歌人に詠まれ、その歌碑も日坂宿へ至るこれまた急こう配の西側の坂にいくつか置かれている。
その坂を下りきり日坂バイパスの下をくぐると廿五番目の日坂宿に着く。
萬屋川坂屋と旅籠を見つつ事任八幡宮も過ぎ、逆川に沿うように歩いてゆくと廿六番目の掛川宿へやってきた。
本日はここで打ち止め。ずいぶん見慣れてきた静岡放送を見ながら床に就く。
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