きたねえホテルに後ろ髪ひかれることなくそそくさと出発する。
道を間違え気が付けば三島宿からほど近い十二番目の沼津宿を通ることなく過ぎゆく。
しばらく歩けば十三番目の原宿にたどり着く。癪の虫の甘心を満足させ、見えずとも左手に駿河湾の気配を感じつつ進む。
沼津よりつづく長いまっすぐな道。吉原駅まで来るとようやく右へ折れる。
しばらく歩けば十四番目の吉原宿へとやってくる。
「吉原の左富士」のことはすっかり忘れ通り過ぎた。畑に沿って流るる用水路に咲いた花。河津桜であろうか。
弧を描きたる駿河湾のちょうど頂点のあたり、富士川を渡り再び弧に沿うように歩くと十五番目の蒲原宿へ来た。ここまでよく歩いたが今日はまだ目的地までずいぶんとある。一息ついて歩き出す。
田子の浦にうちい出てみれば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ
柿本人麻呂と並び賞される歌聖山部赤人がよみたるはまさしくこの地。吉原駅近くにある田子の浦港ではないらしい。
その日の眺めはまさにそのさま。写真を撮るのも忘れる。
東海道中で富士山が最も優美に映ったこの日の行程。徐々に遠のく姿にもまた得も言われぬ情緒あり。
絶景に疲れもまぎれしばらく歩けば十六番目の油井宿に着いた。本陣跡も立派に残り宿場情緒漂う粋な街並み。
斜陽がちらつきはじめるとともに身体の元気も暮れをむかえる。
どうにかこうにか足を運ぶ。風光明媚で名高い薩埵峠を避け、海沿いの国道一号線をゆく。容赦ない海風に悪態つき、へとへとになりながら十七番目の興津宿に着いたころには日もとうに暮れていた。
足も疲れ寒さもつのるばかりでどうにもならないと興津駅からお隣清水駅まで鉄の籠にて向かう。その速いこと矢のごとし。
十八番目の江尻宿は新清水駅にほど近いところにある。ちびまる子ちゃんの街清水。見て回る時間も体力もない。
三平:あたしゃ疲れたよ。トホホ...
ただベッドに倒れこむ三平であった。
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