6.3.15

梅花返り咲き

三月三日はひな祭り。女の子の健やかな成長を願い、家族みんなでちらし寿司を食べる。お雛さまを飾り付け、桃の花を添える。桃の節句の和やかな風景だ。

上に向かって伸びる枝に咲く可愛らしい“桃色”の花は、春の暖かさに彩りを加える、まさに、元気に育つ女の子をたたえるにふさわしい。

桃もいいのだが、私は大の梅好き。
寒さに耐え、細く折れ曲がった枝にポツリと咲く。ほのかな香りを漂わせ、主張のしない「凛」とした佇まいには、えもいわれぬ慎ましやかな美を感じる。

「耐雪梅花麗」“雪に耐えて梅花麗し”

かの西郷隆盛が読んだ漢詩である。この言葉とともに世界に羽ばたいた一人の男が、今春、日本に帰ってきた。

広島カープの黒田博樹投手。昨シーズン、名門ヤンキースでただ一人先発ローテーションを守った名手のトレーニングシャツには、この漢詩が刻まれている。

日本では広島一筋、優勝できずともじっと耐え、愛する広島とともに生きた。そして、見事にアメリカで凛としたいぶし銀の花を咲かせた。

そんな男、黒田は40歳になり新天地に愛する広島を選んだ。復帰会見でみせた姿には、野球人生を締めくくる覚悟を感じた。

今広島には優勝を狙えるだけの戦力が整っている。今シーズンは、広島カープにとっても、黒田にとっても、悲願達成のチャンスだ。

広島が春を迎える頃、雪の冷たさに耐え忍んだ梅の花は、美しく返り咲くだろう。

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