17.2.16
平塚宿より箱根湯本へ廿六キロ
昨晩の天気予報によると、これから日本全土で気温が下がり冬将軍様の到来とあいなるそうな。
もはやただの重りであるテント寝袋を引っ担いで歩き出す。きのうからおかしな左ふくらはぎには気づかないふり。
平塚宿の京方見附にさしかかると見えてくるのがこちら高麗山。案内板に載せられた浮世絵と変わらずそこに鎮座する。
海近くなればそこはもう大磯。八つ目の宿である。虎が石に目もむけず鴫立沢も横目に通り過ぎ、東海道らしい松並木を西へ西へ。
旧吉田茂邸付近から見ゆるは富士の山。遅々とした歩みながらその姿次第に大きくなってきた。
お天道さまの機嫌もよく心地よい陽ざしがふりそそぐ。国府津駅を過ぎしばらくゆくと酒匂川にあたる。お神酒を川にまいたところしばらく酒の匂いが消えなかったことが由来の一つというこの川、お神酒をまいた者は三平のような下戸とみえる。下戸ほどアルコールに敏感なものはない。
酒匂川の酔いもさめぬうちに九つ目の宿小田原に着いた。北条の里小田原はさすがによく整備され、東海道に沿って構える城も大きい。
工事中につきその天守閣拝むにいたらず。遠方中国台湾から来た観光客多く終始にぎやかであった。
小田原を抜けるとあたりは一変山である。風祭を過ぎもう一息で湯本の駅というところで休んでいると、あたりを散歩していたじいさんに声をかけられる。
じいさん:あんた東海道あるいてんのか。
三平:そうです。
じいさん:ひとりで。
三平:ええ。
じいさん:ひとりじゃつまんねえだろ。
三平:そんなことないですよ。ほかにも歩いてる人たまにいるでしょう。
じいさん:いるなあ。でもだいたい二三人で歩いてるぞ。ひとりはつまらんわ。
三平:さっきからなんだってんだじじいこのやろう。てめえだっていまひとりで歩いてるじゃあねえか。好きでひとりで歩いてんだから文句言うんじゃあねえ。
じいさん:そうかい。つまんねえと思うけどなあ。湯本までいくんだろ。もうすぐそこだから頑張んな。
三平:言われなくってもいくよこの寂しがりじじいめ。まいっちゃうなあまったく。
寂しがりじじいを振り払い箱根登山鉄道の湯本駅手前にかかる三枚橋を渡れば、旧東海道の箱根の峠道に入る。のぼってほどなく見えてきたユースホステルが今夜の宿。欧米から来た観光客に人気の宿で部屋にはバックパックが並ぶ。
さてさてこの先どうしたものか。無駄な荷物を担いだまま時間はかかるが京まで上るか、それともいったん引き返し荷を整えて仕切りなおすか。そう思い悩んでいる矢先、浜松より友人が車で帰郷するとの知らせが入る。これありがたやとさっそく頼み倒し途中箱根湯本で拾ってもらえることに。これもお地蔵さんのお導き。ありがてえと手を合わす。
ここまで三日の行程を三時間ほどで舞い戻ったのは一月八日の夜のことだった。
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