16.2.16
神奈川宿より平塚宿へ三十四キロ
挨拶もすませ八時過ぎには寺を出る。スーツのおとーさんがそろって向かう横浜駅を左手に見ながら歩くうちに早四つ目の宿保土ヶ谷に着く。
気が付けば昨日から缶コーヒーと缶紅茶しか飲み食いしていない。コンビニの間隔も長くなってきたところで飯を食う。
休憩もそこそこに権太坂を登れば、その昔武蔵国と相模国との国境であったところに至る。品野坂を下りしばらく歩くとやっとのことで五つ目の宿戸塚に着いた。
強情張りがあだとなり、荷を多く持って来すぎたようだ。疲れてくると、まるでじじいをひとり背負っているかのごとく感じられる。
文句たらたら戸塚宿京方見附を過ぎ、大坂をのぼりきると高台からいま来た道を見下ろす。
三平:よくもまあ歩いたなあ。
バカみたいなことをもらしながら歩き、藤沢バイパスをそれてしばらく行くと六つ目の藤沢宿が見えてきた。
いよいよ痛くなる脚を引きずり引きずり茅ヶ崎を通る。
歌川広重の「南湖の左富士」碑。江戸から京へ上る東海道の道すがら左に富士が見えるのはここと、同じく広重が描いた地「吉原の左富士」しかないそうな。人生それほど甘くない、曇って富士は見られずじまい。
陽ざしが西山に傾き暮れせまる頃、江戸時代馬入の渡しだったところにかかる馬入橋を渡り相模川を越えれば七つ目の宿平塚に到着。
早いとこ泊まる場所を確保しようと探し回る。
三平:昨日は寺だったから、今日は教会にしよう。
悪い奴があるもんで、神様の足元につけ込んでどっか部屋ん中で泊めてもらおうって魂胆だ。
ピンポーン。
神父:はい。
三平:夜分にあいすみません。お尋ねしたいことがあるんですが。
神父:はい。
三平:わたくし京都まで旅をしておりまして、本日は野宿をしようと思っております。つきましてはそちら様の敷地内を一晩だけお貸しいただけないでしょうか。
神父:うちそういうのやってないんですよ。うん。
三平:そうですか。どうも失礼いたします。
三平:...なんだおい。慈悲もへったくれもありゃしねえじゃねえか。縦と横の棒なんか拝みやがって。パンとワインぐらい出しやがれってんだこんちくしょう。癪に障んなほんとうに。風強い日に火つけてやろうか。
もう一軒行ってみるがおんなじ調子で断られる。そうこうしているうちに風が強くなりぐっと気温が下がってきた。こりゃあどうも野宿なんぞはできる気温じゃあない。
三平:罰が当たっちゃった。
神様に足元なんぞあるわけがないんだからつけ込むスキもない。罰が当たった情けなさまでしょい込んでビジネスホテルに宿を求める。
一日歩いた後の風呂ほど気持ちいいものはない。飯も食い、どうやら筋肉のおかしくなった左のふくらはぎをさすりながら眠りについた。
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